仕事の目標設定と、目標がない場合の差

仕事の目標設定と、目標がない場合の差

仕事の目標設定や、人生の目標設定が重要だということは、耳にタコができるほど聞いてきた方も多いと思います。しかし、なぜ、目標設定が重要なのかについては、あまり教えられてこなかったかもしれません。

仕事で明確に目標がない人や、目標が思いつかない人は、目標設定がある人と比べると、次の2点で、大きな差が出きてしまいます。

  1. 目標達成までに何をすべきか、という具体的な行動が見えてくる
  2. やらなくていいことが、分かる

「目標達成までに何をすべきか」という具体的な行動は、目標がハッキリしていなければ分かりません。例えば、大学に行こうと思っても、目標がない場合は、文系の勉強をすればいいのか、理系の勉強をすればいいのか、また、どの程度の難易度の勉強をクリアしなければいけないのか、といった具体的な行動が、全く見えてきません。同じように仕事でも、目標がない場合は、どのように仕事を頑張ればいいか定まりませんから、出勤してから退社するまで、言われたことをこなすのみになってしまいます。仕事で、言われただけのことしかしなければ、いたずらに歳を重ねていき、最終的に、何も成すことなく、定年退職となってしまいます。

しかし、もし「いずれ、医療機器の営業をしたい」と目標があれば、医療機器について勉強したり、営業のノウハウを学ぶといった具体的な行動も見えてきます。また、「中国からの観光客への接客もこなしたい」という目標があれば、中国語の勉強をしたり、中国の文化について学ぶといった具体的な行動も見えてきます。仕事を通して技術を身につければ、職場の評価も上がって給料アップにつながるかもしれませんし、その技術を活かして転職したり、起業して独立できる可能性もあるかもしれません。

「やらなくていいことが、分かる」というのは、目標がハッキリすることにより、不要な行動が見えてくるということです。例えば、「医療機器の営業をしたい」という目標があるのなら、投資に関する知識や、人材管理の技術は、必要ないでしょう。また「中国からの観光客への接待もこなしたい」という目標があるならば、英語の知識や、アメリカの文化について学ぶ必要もありません。

目標のために、やらなくてよいことをハッキリさせている人で有名なのが、実業家でコメンテーターとしても活躍している、ホリエモンこと堀井貴文さんです。堀江貴文さんは、ライブドアの社長時代、自身が「やらなかったこと」を挙げていますが、その中には、次のようなことがありました。

  • ゲームをしない
  • 動画を見ない
  • 交流会や講演会にはいかない

堀江貴文さんは、仕事と関係のない無駄な時間は、極力、減らすように努めていました。そのため、仕事のためにどうしてもゲームをしたり動画を見たりしなければいけない時以外は、ゲームもせず、動画も見ませんでした。また、交流会や講演会に行く時間は無駄だと考えており、ほとんど行ったこともありませんでした。さらに起業してから3年間は、友人と飲みに行ったり食事することも、ほとんどなかったほどです。堀江貴文さんといえば、破天荒な発言や行動により、炎上商法の代名詞のように語られることも少なくありませんが、仕事に関しては、非常にストイックな面を持っていたわけです。また、お笑い芸人で有名司会者としても名を馳せていた島田紳助さんは、テレビ番組「松紳」の中で、「全く本を読まない」と述べています。活き活きとしたトークを披露するには、実際に様々な体験をすることが大事だと考えており、本で読んだ知識は話芸にはあまり必要ないと考えていたためです。そのほかにも、実業家として成功している成功者の中には、テレビを全く見ない人や、さらに新聞さえも全く読まない人も多くいます。

一方、多くの人は、きちんと目標を設定していないため、不要な行動を多くとってします。営業で成績を伸ばしたいにも関わらず、マネージメントの本を読んだり、中国人の接客をしたいのに、ハワイやヨーロッパに海外旅行に行ったりします。目標が立てられない人は、不要な行動が多く、いつまで経っても、大した成果を望めません。

目標を早く達成するためには、やらなくていいことは捨てて、限られた時間と気力を、やるべきことに集中する必要があります。ソフトバンクの孫正義さんは、目標のことを「ビジョン」と読んでおり、ビジョンの大切さについて、次のように語っています。

  • なぜ、多くの人が、大きな成功を収められていないか? その理由は、ビジョンがないからだ。ビジョンがないと、本人がどんなに頑張っても、同じ場所をぐるぐる回っているだけで、山を登っていくことができない。しかし、ビジョンがあると、無駄な動きが少なくなり、最後には、大きな山に登ることができる。

ビジョンが定まっていなければ、山を登ることはできず、山の麓をぐるぐる回っているだけです。同じように、目的地が決まっていなければ、いくら性能の良い車に乗ったとしても、走り出すことはできません。また、「目指す山=ゴール」がハッキリしなければ、どんなにビジネス書を読んで、ビジネス戦略や営業のテクニックを学んだとしても、知的好奇心を満たすのみで、ほとんど意味がないわけです。孫正義さんは、実際に、自らの示すビジョンを、弱冠19歳にして定めており、「人生50年計画」として、次のようにまとめています。

  • 20代:自ら選択する業界に名乗りを上げ、会社を起こす。
  • 30代:軍資金を貯める。軍資金の単位は、最低1000億円。
  • 40代:何かひと勝負をする。1兆円、2兆円と数える規模の勝負をする。
  • 50代:事業をある程度完成させる。
  • 60代:事業を後継者に引き継ぐ。

なお、40代で孫正義さんが打った最大の大勝負が、1兆7500億円でのボーダフォンの買収劇です。孫正義さんのビジョンと、実際の事業での活躍を照らし合わせみると、目標と人間の成長というのは、切っても切れない関係であることが、よく分かります。

目標を設定することの重要性は、脳科学者である松本元さんによっても語られています。松本元さんは、脳型コンピュータの開発も手掛け、情緒や意志の果たす役割を研究し続けた方で、「愛は脳を活性化する」の著書なども記しています。その松本元さんは、目標を設定することが脳に果たす役割について、講演で次のように述べていました。

  • 脳はある目標を設定し、その達成に向けてみずから回路を作っていく。そのため「こうありたい」と強く思い続けると、脳の働きは意欲によって活性化されいく。

そのため、早くから目標を決めておけば、脳の力も活性化され、他の人の何倍もの行動力で進み続けていくことができるわけです。

目標によって、人の選び進むべき行動は違ってきますから、もし英語を勉強するとしても、ビジネスとして用いることを目標にするのか、海外移住することを目標にするのか、によって、英語の勉強の仕方は異なってきます。英語でビジネス交渉をしたいのに、日常英会話のテキストで勉強していては、いつまで経っても本来の目標に達成できません。また、絵を勉強するとしても、マンガ家になりたいのか、イラストレーターになりたいのか、によって、勉強の仕方は変わってきます。マンガ家になりたいのに、コマ割りの勉強や、ストーリー作りが全くできなければ、話になりません。「やるべきこと」と「やらなくていいこと」がはっきりして、「やるべき学習」と「やらなくていい学習」を区別できれば、自分に本当に必要な勉強だけに集中できるため、ゴールに到達するまでのスピードも、格段にアップします。

仕事の目標設定の例や例文の作り方

仕事の目標設定が大切だということはわかっても、仕事の目標の設定の例をどうすればいいか、悩んでしまう方も多いかもしれません。目標設定やビジョンとは、「将来こうなりたい」という未来像ですが、実際に考えるとなると、「ビジョンなどという壮大なことを言われても、思いつかない」と、途方にくれてしまいやすいものです。また、「社会人として成功したいとは思っているけれど、具体的にどうなりたいかと言われると…」と、ぼんやりとしか目標を立てられない方も多くいます。そんな方は、次の点を意識して、目標を設定するようにしてみましょう。

  1. ロールモデルを見つける
  2. 目標は適当でいい

「ロールモデルを見つける」の「ロールモデル」とは、「自分もこうなりたい」と思う、手本となる人物モデルや、事業モデルです。そして、ロールモデルを「指標(ベンチマーク)」として、ロールモデルに追いつき、最終的にはロールモデルを超えることを目指します。

例として、人物のロールモデルを仕事の目標設定として用いるなら、会社の中の憧れの先輩や、バリバリ仕事をこなしていてすごいと思う取引先の人、カリスマ性のある大学時の先輩などを探して、ロールモデルの対象としてみましょう。また、人物のロールモデルを、仕事ではなく人生の目標とするのなら、テレビに出ている実業家や芸能人、歴史上の偉人をベースにしてもOKです。また、事業のロールモデルであれば、同じ業界のナンバーワンの会社をロールモデルにしても構いません。

ロールモデルが決まれば、その人やその会社を徹底的に調べたり、観察したりします。そうすれば、その人がどのような業務を経験してきたり、日頃どんな仕事ぶりをしてきたりしたかが分かります。また、普段の仕事の事前準備の仕方や、プレゼンの資料作りの方法など、様々なことが見えてきます。あとは、そのロールモデルのやっていることを真似れば、ロールモデルに追いつき、追い越すための具体的な方法がわかります。

また、上司に職場での目標を設定するよう求められた場合は、ロールモデルの中で、あなたが憧れるようなスキルを1つ取り上げて、そのスキルを、職場の目標として設定してみましょう。例として、ロールモデルのプレゼンの技術や交渉の技術をピックアップして「プレゼンや交渉で、場の空気を和やかにしながら、自分の意見に同意させていく」といった職場内目標をを設定することも可能です。また、ロールモデルの営業の成績をピックアップして「新規契約だけで月5件取る」といった目標でもいいかもしれません。

成功している経営者も、目標設定にロールモデルを使っています。例えば、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんが、通信事業をメインで手掛けていたときのロールモデルは、当時、通信事業ナンバーワンであったNTTドコモでした。孫正義さんは、2006年にボーダフォンを買収したとき、NTTドコモをロールモデルにして「10年以内に、必ずNTTドコモを超える」と宣言していました。そして実際、2013年に目標を達成し、ソフトバンクは業界ナンバーワンとなり、NTTドコモの売上高・営業利益・純利益の全てを超えました。

また、ソフトバンクの孫正義さん自身にも、ロールモデルとなる人物がいます。そのロールモデルが、孫正義のtwitterや講演の中でも幾度となく登場している、幕末の傑人「坂本龍馬」です。孫正義さんは、何か苦難や困難があるたびに、坂本龍馬の本を読み返し、活路を見出していました。例えば、孫正義さんは創業2年目で、肝硬変の直前の慢性肝炎を患い、余命5年の宣告を受けましたが、そのときも、坂本龍馬の本を読み直して、「坂本龍馬は、1862年に26歳で脱藩してから1867年に31歳で亡くなるまでの5年間でいろいろ成し遂げたのだから、自分は余命5年だとしても、5年間でいろいろできるはずだ」と生きる気力を得て、3年半の入退院生活を乗り切りました。

「目標は適当でいい」というのは、目標は随時、調整可能だからです。よく、目標が明確に定まらないからといって、自分探しの旅に出たり、いろいろなことに挑戦したりする人がいますが、自己分析をいくらしても、自分の内面をいくら掘り下げても、あまり意味はありません。普通は、自分に何が向いているかどうかなど確信が持てないものですし、あれこれ考えていたところで答えは出ず、いたずらに時間だけが過ぎ去ってしまいます。

そのため、ざっくりとした仮の目標でもいいので、とりあえずロールモデルを決めたり、目標を定めてみて、進むべき方向を決めてみましょう。そして、当面は、その方向に全力で走っていき、後で修正すれば大丈夫です。例えば、スペインとポルトガルが好きなのでどちらかで住みたいと考えていたなら、「スペインかポルトガルで暮らす」と、とりあえず仮の目標を立てて置きます。そうすれば、自然と、スペインとポルトガルの情報に目が向き、関心をもってググったりしてしまいますから、少しずつ、仮の目標が、具体的になっていき、絞られてくるようになります。

とにかく一番いけないのは、ひたすら机に向かって、「自分は何が向いているか?」と自己分析をしているだけの状態です。自己分析しているだけでは、結局、山を登ることなく、山の麓をぐるぐる回っているだけですから、決して、ゴールにはたどり着けません。とにかく、仮の目標でいいので、とりあえず目標を決めて、動き出しましょう。

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