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ニッチ戦略とは? メリット
ニッチ戦略とは、ニッチな分野でナンバーワンになるという戦略です。なぜ、ナンバーワンになるのが重要かというと、ナンバーワンになれば、人・モノ・お金・情報など、あらゆるものが集まってくるというメリットがあるためです。もちろんあなたも、もし、何かについて知りたいと思ったら、おそらく、その分野で一番の人に話を聞きたいと思うでしょう。あえて、2番の人に聞きたいという理由は、ないはずです。
同じように、会社や企業でも、ナンバーワンになれば、優秀な人材を雇用することができますし、資金調達もしやすくなります。また、材料を安価に仕入れることもできますし、販路も拡大しやすいため物を売りやすくなります。ナンバーワンとナンバーツーでは、取りうる戦略の幅にも天と地ほどの差があります。ナンバーワンになることのメリットは膨大なので、仕事や事業で成功するためには、ナンバーワンにならなければいけません。
しかし、後発で参加する人や、新規に参入する会社にとって、ナンバーワンの称号を手に入れることはたやすいことではありません。そこで重要になってくるのが、ニッチ戦略です。ニッチ戦略の肝は、次の点です。
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人がやらないことなら、最初に始めた人が、すぐにナンバーワンになれます。また、もし、すでにやっている人がいたとしても、その人数がごく少数なら、競争も激しくないため、ナンバーワンになる確率もスピードも高まります。10倍速で目標を達成し、成り上がるには、どんなにニッチな世界でもいいので、ナンバーワンを取ることが、カギとなります。
例えば、特に女性に多いですが、「趣味を生かした仕事がしたい」と考えている方が多くいます。しかし、普通は、趣味を仕事にしようとすると「何か資格を取ろう」とか「スキルを磨くためにスクールへ通おう」という発想になりがちです。そのため、ソムリエの資格をとったり、アロマセラピーのスクールに通ったりします。しかし、資格やスクールにお金や時間を使っても、競争相手が多すぎるため、ほとんどの人は、それを仕事にすることができず、趣味のままで終えてしまいます。すでに多くライバルのいる分野では、先に参入した先駆者たちが高い実績を得ているため、よほどの才能や運の持ち主でなければ、競争に勝つ見込みはありませんから、戦う前に負けているようなものです。
しかし、戦うフィールドを変えれば、勝つチャンスがあります。あなたの戦いたいと思うフィールドをできるだけ小さく区切り、自分だけが入れるサイズの土俵を作ってしまえば、自分しかいない範囲の中なので、戦わずしてナンバーワンになれるわけです。もし、あなたがお菓子作りを趣味にしていて、目標が「フランス菓子のお菓子作りの先生になりたい」という場合でも、次のような方法でなら、勝つチャンスがあります。
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最近は、カルチャースクールも、生徒を呼び込むためにオリジナリティのある企画を求めているため、他にはないユニークな教室の提案とともに自分を売り込めば、採用される可能性も充分にあります。晴れてカルチャースクールの講師になれれば、日本で唯一かもしれないチリ菓子講師になれ、本当に日本でただ一人なら、講師になった瞬間にナンバーワンになれます。チリ菓子講師なら、おそらく競合がいないため、わざわざ広告に時間やお金を費やす必要もなく、興味のある人が自然と集まるようになってきて、独占状態のビジネスが続きます。日本で唯一のチリ菓子講師としてブログやツイッターで情報発信すれば、雑誌やテレビの制作者の目にも止まり、メディアに顔を出す機会も増え、その分野の第一人者である「先生」となることができます。
しかし、もし、フランス菓子の先生を直接目指そうと思ったら、実現の可能性はかなり低まります。日本には、本場フランスで修行した経歴を持つパティシエや専門家もたくさんいるため、趣味程度のお菓子づくりの実績では、とても歯が立ちません。また、もし、数年フランスで修行したとしても、人気講師になれる確率は低いでしょう。
ナンバーワンになるためには、自分で勝手に線を引いて、その領域の中で勝手に一番を名乗ればいいだけです。そのため、遠慮せず、勝手にナンバーワンになりましょう。ナンバーワンになるためには、土俵の大きさやジャンルの知名度は気にせず、ナンバーワンという肩書を作ることを目指しましょう。これが、ニッチ戦略で一番大事な点であり、最短最速で目標を達成する極意になります。
ニッチ戦略の成功例
ニッチ戦略での成功例の代表者が、百獣の王としてテレビでも引っ張りだこの「武井壮(たけいそう)」さんです。武井壮さんは、大学3年でキングオブアスリーツとも呼ばれる陸上十種競技を始め、1997年の第81回日本陸上競技選手権大会で優勝しています。そして、武井壮さんさんが十種競技で優勝できた理由について、「日本の選手人口は非常に少なく、そのおかげで優勝できた一面もある」ということを語っています。もちろん、武井壮さんのもともとの身体能力の高さも優勝の一因ですが、一番になるためには、いかに競技人口の少ない競技を選ぶかというのも、重要であることがわかります。
同じような成功例はいくつもあり、マラソン人口の少ないカンボジアに移住して2016年のリオデジャネイロオリンピックでマラソンのカンボジア代表になった「猫ひろし」さんも、ニッチ戦略の成功例といえるでしょう。また、競技人口の少ないボブスレーで1988年の冬季オリンピックに出場できた、中央アメリカの南国ジャマイカの話は、後に「クール・ランニング」としても映画化され、話題となりました。最近では、テニスでのオリンピックの出場を視野に入れ、ライバルの多いアメリカ国籍ではなく日本国籍を選んだ「大坂なおみ」さんも、話題となりました。
ホリエモンこと堀江貴文さんも、「年金を語る#2」の動画の14分35秒あたりより、過当競争は避けた方がいいことを話題にしています。その中の成功例として、大手不動産会社の元営業マンで30歳前後で仕事をやめた男性が、その後、究極の心理戦ゲームで大人気の「人狼ゲーム」のできる「人狼ルーム」という分野と、「ダンシングけん玉」というニッチな分野で成功を収め、その業界を作るまでになったという話を取り上げています。また同じように、30歳前後で仕事をやめフリーターになった女性が、その後、日本のトライアスロンの代表になった話も取り上げています。30歳前後の女性のトライアスロンの選手層は非常に薄いため、日本代表にもなりやすいわけです。逆に男性の場合は、トライアスロンをする40代男性・50代男性が、一番選手層が厚いため、避けた方がいいことも述べています。40代男性・50代男性は、健康でお金も持っていて時間に余裕のある男性が多いため、参加者が非常に多いわけです。
ニッチ戦略は、スポーツやゲームの世界だけに限りません。現在は引退している、お笑い芸人で人気司会者でもあった島田紳助さんの場合も、自身のトークの中で「負ける勝負は絶対にしない」という哲学を、何度も語っていました。島田紳助さんは、若い世代にだけウケるニッチな漫才を目指し、「ツッパリ漫才」を考案して「紳竜」のコンビで大ブレイクしていました。しかし、島男紳助さんの同期には、令和元年に春の紫綬褒章も受賞した漫才コンビ「オール阪神・巨人」の巨人さんと、トークの天才「明石家さんま」さんがいたため、早々に、漫才やお笑いでナンバーワンになることは諦めていたといいます。そして最終的に、お笑いの天才ダウンタウンの漫才を見て、自分の漫才に限界を感じ、いさぎよく漫才コンビを解消しました。
ソフトバンクグループの取締役である孫正義さんの、ナンバーワンへのこだわりも有名で、しかも、孫正義さんの場合は、他を凌駕する「圧倒的ナンバーワン」になることを重視しています。そのことは、2010年の「ソフトバンクアカデミア開校記念特別講演」でも自ら語っており、「小学生1年ぐらいの頃から、やると決めたことは1番にしかなっていない」と語っています。
ニッチ戦略とは? デメリット
ニッチ戦略とは、競争することなくナンバーワンとなる方法ですが、デメリットが存在します。それは、セグメントを小さく区切ることにより、ナンバーワンにはなりやすくなりますが、得るものが少なくなってしまうという点です。先程のチリ菓子の講師の例でいうと、チリ菓子の分野でナンバーワンになることは簡単ですが、チリ菓子を習いたいという人は少なくニーズが低いため、ナンバーワンになったとしても、大した成功は収められません。言うまでもなく、チリ菓子講師として成功するよりも、フランス菓子講師として成功する方が、莫大な富を得ることができます。
同じような話は、芸能人の武井壮さんも述べています。武井壮さんは、十種競技で日本一になったにも関わらず、得るものがほとんどありませんでした。十種競技の選手としてマスコミに取り上げられることもなく、十種競技の選手として食べていくこともできませんでした。その理由として、「喜ばせる人が少ないから」ということに気づくまでに、随分、時間がかかったと言います。
そのため、ニッチ戦略は、ナンバーワンになったとしても、対価が安すぎるというデメリットがあるように思われがちです。しかしそれは、ニッチ戦略の活かし方をきちんと理解していないために、デメリットとして感じてしまうからです。実際のニッチ戦略は、あくまで最終目標へのステップとして踏む一歩であり、本来のニッチ戦略というのは、次の2つの目的のいずれかとして用いることで、有効性を発揮できます。
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「最終目標の飛び石として利用する」というのは、「わらしべ長者戦略」とも呼ばれており、「ニッチ戦略」で名を上げておいて、それを元にして、大きな成功を収めるのを目的とする方法です。ニッチ戦略でナンバーワンになることにより、名乗りを上げることができるようになり、その知名度を飛び石にします。そして、わらしべ長者のように、知名度を利用して、より大きいものと物々交換するようなイメージで、成功していくわけです。
一般的によく使われる用語でいえば、「箔をつける」ために、ニッチ戦略を利用しているとも言えます。実は、先ほどのニッチ戦略の例で出した「本当はフランス菓子の講師になりたいけれど、チリ菓子講師を目指した人」の話には、続きがあります。チリ菓子の第一人者として活躍できれば、個人的なファンが増えるため、その後に「フランス菓子の教室もはじめました」と広告します。そうすれば、フランス菓子の教室も受講してくれるファンが必ず出てくるため、最終目標であるフランス菓子講師として、生計を立てていくことができるようになります。
飛び石として活用する手法がよく使われるのが、やはり芸能人の世界です。芸能人は、過去の経歴を「肩書」としてよく利用します。先程の武井壮さんの場合は、最終目標をはじめから定めていたわけではありませんが、2006年頃に電気グルーヴのピエール瀧さんとスポーツバーで知り合ってからは、人を喜ばせるために芸能人を目指すようになりました。そのため、十種競技の日本チャンピオンだったことを存分にアピールし、百獣の王として人気を博し、現在の地位を確率しています。他にも、小泉チルドレンとして名を馳せた後にコメンテーターや講演で大成功を収めている「杉村太蔵」さんや、不祥事を起こして服役した過去もネタにして活躍している実業家の「堀井貴文」さん、匿名掲示板2ちゃんねるを作った知名度を活かして評論家としても活躍している「西村博之(ひろゆき)」さんなど、例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。
「いずれ成功するであろう分野を狙う」というのは、現在はニッチであっても、将来性のある分野で1位を狙うということです。将来性のある分野を見据えて、発展途上の分野や産声をあげたばかりの業種を狙って成功を収めたのが、ソフトバンクグループの社長でもある孫正義さんです。孫正義さんは、ニッチな分野で成功を収めていった人物だと勘違いされやすいですが、実際は、先を見越して投資してきた人物です。沈みかけていたボーダフォンの会社を1兆7,500億円で買収した理由も、最終的には一番になれるという自信があったからでした。100円均一ショップで有名なダイソーも、ニッチな分野から始めて大きく成長した産業といえるかもしれません。ダイソーは、現在では、コンビニを除けば、飲食業界マクドナルドの店舗数をも凌ぐ店舗数を誇っていますが、100円均一を初めた当初は、路地でほそぼそと販売していました。
ニッチ戦略というと、デメリットばかりが強調され、「成功したとしても、大した利益はない」と揚げ足を取る人も多いです。しかし、本当の、ニッチ戦略は、大きな成功を用いるための足がかりとして用いるものなので、間違えないようにしましょう。