ビジネススキルの向上とスキルアップの方法

ビジネススキルの向上の方法

ビジネススキルの向上といっても、ビジネススキルは数値化できにくいため、具体的なスキルの習熟度を測るのが困難です。例えば、ビジネススキルの中でも有名な「カッツモデル」で知られる管理者(マネージャー)のスキルには、次の3種類があります。

  1. テクニカルスキル:業務遂行能力
  2. ヒューマンスキル:対人関係能力
  3. コンセプチュアルスキル:概念化能力

「テクニカルスキル」とは、仕事をこなすための知識や技術で、PCのスキルや専門知識なども含まれます。「ヒューマンスキル」は、人間関係づくりや交渉能力や人をまとめる技術で、プレゼンテーション能力なども含まれます。「コンセプチュアルスキル」は、物事の本質を見極める能力で、有名なロジカルシンキング(論理的思考)やクリティカルシンキング(批判的思考)なども含まれます。

「カッツモデル」のようなビジネススキルは、どれも数値化できないため、自分のスキルの向上度を測ったり、他人と比較しにくくなっています。例えば、「プレゼンテーション能力はどの程度なのか?」を、客観的に測るのは困難でしょう。ビジネススキルに限らず、基本的にスキルというのは、客観的にどの程度スキルアップしているかを測るのは困難なので、例えば、あなたが今までに付き合ったことのある女性の料理スキルや掃除スキルを、客観的に比較するのも困難でしょう。

しかし、自分のビジネススキルの向上がどの程度なのか、客観的に考えるのに利用できる、一つの方法論があります。それが、「1,000時間理論」や「1万時間の法則」と言われる理論を使う方法です。

ビジネススキルのスキルアップの方法

あなたのビジネススキルのスキルアップの方法として用いることができるのが、スキルの学習や勉強を時間に換算する方法です。特に有名なのが「1万時間の法則」や「1万時間ルール」と呼ばれるもので、次のような法則です。

  • 一流になるには、10,000時間の勉強が必要である。

「1万時間の法則」は、心理学者であるアンダース・エリクソンにより、ベルリンの音楽大学の学生への調査結果から、提唱された理論です。エリクソンは、音大のバイオリンの学生の将来性を3つに分類し、「1.世界的に活躍するレベル」「2.普通のプロレベル」「3.音楽教師レベル」の3つに分類したところ、どのグループに分類されるかに、練習開始時の年齢や、資質は関係ないことが分かりました。そして、将来性を予測するのに一番大事な要因が、今までに費やした練習時間であることも分かり、次のような結果になりました。

  1. 世界的に活躍するレベル:合計10,000時間、練習していた
  2. 普通のプロのレベル:合計80,000時間、練習していた
  3. 音楽教師レベル:合計4,000時間、練習していた

この、将来性と練習時間の関係は、バイオリンの学生だけでなく、ピアノの学生でも同じ結果となり、「1万時間の法則」としてまとめられました。「1万時間の法則」は、実際に成功した人の作業量からも窺い知ることができ、アメリカでベストセラーとなった、マルコム・グラッドウェルの著書『天才! 成功する人々の法則』の中では、創業するまでに10,000時間をコンピューターの勉強に費やしたビル・ゲイツや、ヒット曲を出すまでに10,000時間の演奏を費やしたビートルズが取り上げられています。

将来性と学習時間の関係をまとめた「1万時間の法則」は、さらに「1,000時間理論」などのバリエーションもあります。そして、それらをまとめると、勉強やトレーニングの時間による習熟度は、次のようにまとめられます。

  • 100時間:脱初心者
  • 1,000時間、または100万円:中級者、アマチュア、プロの入り口
  • 3,000時間:プロ、それで飯が食える
  • 10,000時間:専門家、プロフェッショナル、一流、世界トップレベル

この理論を実際の例に当てはめて、例えば、あなたがプレゼンテーションの技術を身に着けたいとしたとすると、次のようになります。

「100時間」勉強すれば、脱初心者レベルになります。1日3時間勉強すれば、約1ヶ月で100時間に達します。100時間学習すれば、プレゼンテーションをしていても、失敗することはなく、無難にプレゼンテーションをやり遂げられるようになるでしょう。しかし、多くのビジネスマンは、プレゼンテーションの勉強をしようと思っても、本を数冊読んだり、数回セミナーに行っただけで終わりにしますから、100時間の勉強に達することはありません。

「1,000時間」勉強すれば、中級者レベルになります。1日3時間勉強すれば、約1年弱で1,000時間に達します。1,000時間学習すれば、他の人にとって聞く価値のある素晴らしいプレゼンテーションを提供できるようになり、アマチュアとしてプレゼンテーション技術を披露する分には、充分満足のいく域に達することができます。「1000時間」の部分は、「100万円使う」と読み替えられることもあります。100万円を学習に使う場合、1冊2000円の本であれば500冊分、1回30,000円のセミナーであれば33回参加分です。

「3,000時間」勉強すれば、プロレベルになります。1日3時間勉強すれば、約3年で3,000時間に達します。3,000時間学習すれば、プレゼンテーションの技術を教える講師として、セミナーを開くこともでき、技術を教えることで独立開業することもできます。

「10,000時間」勉強すれば、専門家で、世界的に活躍できる一流のプロフェッショナルになります。10,000時間勉強すれば、日本だけでなく、世界的に見ても注目されるプレゼンテーションの技術を教えることができるため、各国のマスメディアでも取り上げられる人になります。

現在では、「10,000時間の法則」には否定的な意見も多く、学習時間より質の方が重要であったり、分野によっては才能が大きく関係するとも言われていますが、それでも、勉強時間や勉強量が大事であることには、変わりありません。

スキルを向上させるためには、ひたすら時間を費やし、作業量をこなすことが大事だという実例も多く、例えば、ネットで話題になった方だと、次のような方がいます。

  • 黒魔:不協和音や変則的なリズムの耳コピBGM作成から、1年100曲以上作った年などを経て、6年でプロ作曲家に
  • おうり:イラストを描き続けて、10年以上かけて絵師として大成
  • figureneet(フィギュアニート):フィギュアを作り続けて、3年かけてアニメの公式原型師としてプロに

その他にも、絵画やイラストの分野では、過去の絵との比較を通してスキルの習熟度の進化を示している方も多く、「日本人が17年絵を描き続けた結果」では、同人作家の「たぶち」さんが17年間の変化を公開しています。

同じように、質ではなくまずは量を求めることを推奨している人としては、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんも「量は質に転化する」と述べており、事業を始めるためには、まず100通りのアイデアを出すことを提唱しています。また、おっさん英会話の「さわけん」さんは、英作文を2万回こなして、通訳中級の仕事のレベルに達した過去を取り上げ、「量は質に変わる」と述べています。

学習時間や努力の大切さについては、マンガ『はじめの一歩』の中でも、ボクシングトレーナーの鴨川会長が教え子へ、次のような言葉で語っています。

  • 努力した者が全て報われるとは限らない。しかし、成功した者は、皆、すべからく努力している。

努力して時間をかければ、少なくともビジネススキルアップすることは確実です。そのため、自分のスキルアップの向上は、何時間学習するかという、時間で判断するようにしてみましょう。

ビジネススキルアップと資格

ビジネススキルアップを客観的に測れるもう一つの指標が、資格の有無です。ビジネスに関する資格は、その技術を勉強したということが、一目瞭然でわかりやすいため、資格をたくさん取ろうとする資格マニアの方も多いと思います。

しかし実は、ビジネススキルの資格も、時間に換算して考えることができます。というのも、資格というのは、取得するための大まかな勉強の平均時間が、大体、決まっており、次のようになっているためです。

  • 宅建:200~300時間
  • 通関士:300時間
  • 行政書士:500時間
  • 中小企業診断士:1,000時間
  • 土地家屋調査士:1,500時間
  • 司法書士:2,000~3,000時間
  • 公認会計士:3,000時間
  • 税理士:5,000~6,000時間
  • 司法試験:8,000時間

資格の勉強時間を見てみると、「1000時間理論」と同じように、1,000時間勉強すれば、ほとんどのビジネススキルの資格を取ることができます。ちなみに、日本人が英語をマスターにするのにも、大体、1,000時間のトレーニングが必要とされています。また、3,000時間以上勉強すれば、プロとして独立開業できるレベルの難関資格を取ることもできます。

ビジネススキルを超速で身につける方法

ビジネススキルを超速で身につける方法として、新たに注文されている学習時間があります。それが、アメリカの人気作家「ジョシュ・カウフマン」さんにより提唱されている「20時間の法則」です。20時間の法則は、「TED」という様々な分野の第一人者がプレゼンするトークショーで解説された、次のような法則です。

  • 20時間の法則:「まあまあ良い」レベルまで到達できるには、たった20時間でいい

カウフマンさんによれば、学習によりスキルの習熟度がもっとも急上昇するのは学習の初期であり、「とても下手くそな状態」から「まあまあ良い」レベルまで到達する最短期間は20時間であることが、調査により明らかにされました。ちなみに、20時間の学習であれば、1週間や1ヶ月に換算すると、おおよそ次のようになります。

  • 1週間:1日3時間やれば、1週間で約20時間
  • 1ヶ月:1日45分やれば、1ヶ月で約20時間

「1日3時間で1週間で20時間」というのは、あなたの今までの趣味や学生生活、仕事を思い返してみると、なんとなく心当たりのある方がいるかもしれません。例えば、あなたが全く知らなかった登山や写真の趣味について調べて、そこそこ詳しくなれたのが、おおよそ20時間程度だったかもしれません。また、あなたが新しいゲームをプレイして、そこそこそのゲームについて語れるようになったのが、おおよそ20時間プレイしたりネットで攻略法を調べた後だったかもしれません。さらに、仕事で新しい商品や分野についてプレゼンを頼まれ、そこそこ詳しくなったのが、おおよそ20時間調べた後だったかもしれません。また、20時間というのは、ちょうど、ビジネス書を数冊読む程度の時間なので、あなたが気になっている分野の本を読んで「ある程度わかった」と感じたことのある時間とも、一致するかもしれません。

以上のように、20時間の法則は、「全くその分野を知らない人に、雄弁に語れる」ために、知識や技術を最低限身につけるための目安として利用することができます。逆にいうと、プレゼンまでに最低20時間ない場合は、調べる時間が足りないので、ハッタリをかますこともできません。そのため、全く新規の分野にも関わらず、時間を20時間確保できない場合は、その仕事を引き受けてはいけない、と考えることもできます。

ビジネススキルアップや、ビジネススキルの向上を目指す場合は、全て、時間に換算して、捉えなすことができます。あなたが、ビジネススキルをどの程度まで身に着けたいかをまず考え、目指す習熟度に見合った勉強時間や学習時間を確保するようにしてみましょう。

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