頼み方のコツとは? ビジネスや仕事で会社で人にお願いする言い方

頼み方のコツ

頼み方のコツをきちんと知らなければ、同僚や後輩や部下に、会社で上手に仕事を手伝ってもらえません。うまい頼み方のコツは、次の2つの点に気をつけることです。

  1. 人間関係を悪くしない頼み方
  2. 正しい伝達をする頼み方

「1.人間関係を悪くしない頼み方」とは、人にお願いするときに、人間関係が悪くならないようにするのを気をつけることです。頼み方が下手だと、頼んだときに嫌な顔をされたり、断られたり、仕事をしてもらった後の人間関係が悪くなってしまいます。人間関係を悪くしないために、最低限、卒のない普通のコミュニケーションスキルは身につけておきましょう。さらに、頼み方のコツとしては、期限までに余裕がある状態で頼み、相手の通常業務なども考慮して無理のない仕事量を頼みましょう。さらに、仕事を頼むとき、次の点にも気をつけましょう。

  • 品質の水準:頼む側が決める
  • 品質の管理:頼む相手に委ねる

「品質の水準」とは、「どのようなレベルのものを作成してもらうか」で、頼む側がきちんと決めなければいけません。例えば、EXCELで顧客データを作ってもらうとき、住所や購入金額といった含める情報をきちんと指示し、必要であれば、こちらでテンプレートも指定しておきます。作ってもらうデータの品質の高さについても指定する必要があり、取り急ぎ形だけ仮で作ってもらうのか、それとも経理で使うため正確なデータが必要なのか、ハッキリとさせていきます。

「品質の管理」とは、「どのような方法で作成してもうか」で、頼む相手に委ねるようにします。例えば、テンプレートを指定した後、どのように資料を作成するかは、相手に委ねます。また、品質の高さをキープするために、どのように資料をチェックするかのチェック方法も、相手に委ねます。品質の管理まで指定してしまうと、作業しづらくなって人間関係も悪くなりますし、作業が煩雑になってしまい、オーダーミスやオーダー漏れも増えます。

「2.正しい伝達をする頼み方」とは、頼んだときに、認識の相違(ズレ)が生じないように気をつけることです。伝え方が下手だと、認識齟齬が起きやすくなります。このミスを、プロジェクトマネジメントでは「インピーダンス・ミスマッチ」と呼びます。インピーダンスミスマッチとは、元々は電気工学の分野で使われる用語で、エネルギーの伝達で不都合が起きることを指しますが、ビジネスの場面で使うときは、情報の伝達で不都合が生じることを指します。わかりやすい例でいうと、「間違った伝言ゲーム」や「すれ違い」と言った状態です。

コミュニケーションでは、伝言ゲームのようにノイズが入りやすいため、正しい伝達をするためには、いかにノイズを少なくするかが、コツになってきます。伝達におけるノイズは、次の3つに分けられます。

  1. 物理的ノイズ:騒音などで起きる
  2. 心理的ノイズ:先入観や偏見で起きる
  3. 意味的ノイズ:意味を共通理解していないときに起こる

「1.物理的ノイズ」というのは、騒音やBGMなどの物理的なノイズです。物理的といっても、音だけでなく、周囲の色、部屋の広さ、明るさ、温度、湿度など、様々な物理要因が、頼むときのノイズとなります。例えば、あなたが居酒屋で女性に付き合ってほしいと言われても、本気なのか冗談なのか分からなかったりするかもしれません。しかし、東京タワーで夜景を見ながら言われたら、本気で付き合って欲しいのだと感じてしまうハズです。

「2.心理的ノイズ」というのは、先入観や偏見などの心理的ノイズです。心理的ノイズとしては、その他にも、緊張や期待、不安などを、送り手や聞き手が感じてしまうと、ノイズとなってしまいます。例として、チンピラのような格好をした人が訪問販売に来たら、詐欺ではないかと疑わってしまうかもしれません。また、その他の例として、見た目の美しい女性に告白されたら、ドッキリではないかと思い、疑ってしまうかもしれません。

「3.意味的ノイズ」というのは、共通理解が得られていないときに起こるノイズです。意味的ノイズは、例えるなら、お笑い芸人の「アンジャッシュ」のコントに近いと言えるかもしれません。「アンジャッシュ」のコントは、「勘違いコント(すれ違いコント)」と呼ばれ、コンビ間で違うものを想定しながら話が進んでいきます。例えば、第5回の爆笑オンエアバトルで優勝したネタでは、渡部建が話す「猫の家出」を、児嶋一哉が「嫁の家出」と勘違いしながら、コントが展開していきます。会社で仕事を頼むときは、そこまで極端な意味的ノイズは生じないでしょうが、細かな部分で齟齬は生じやすいものです。日常生活で見ても、親や彼女への頼み事がうまく通じていなかったり、大事な約束でディスコミュニケーションが生じてしまったりして、喧嘩になってしまった経験のある方も、多いかもしれません。

人にお願いするときの言葉で、特に頼み方のコツとして重要になってくるのが「意味的ノイズ」の軽減です。意味的ノイズというのは、頼み方が曖昧だった場合に、よく生じます。そのためビジネスでは、意味的ノイズを減らすような言い方を考える必要があります。

ビジネスや仕事での頼み方のうまい言い方と言葉

会社や仕事では、意味的ノイズを減らすための、うまい言い方と言葉を選ぶ必要があります。意味的ノイズを減らすためには、次の点に気をつけましょう。

  1. 名詞を使う
  2. 日時は時間で決める
  3. 3点セットでお願いする

「1.名詞を使う」というのは、頼むときは「動詞」ではなく「名詞」を使い、曖昧さを回避するということです。例えば、お願いするときに「調べておいて」と動詞で言われると、頼まれた方は、調べるだけでいいのか、調べて口頭で報告しなければいけないのか、調べて紙面で提出しなければいけないのか、分かりません。そのため、意味的ノイズが生じやすくなり、言い逃れされて「調べろと言われたので調べましたが、資料にしろとは言われてないので資料は作っていません」と、言われたりします。しかし、「企画書をお願いします」「報告書をお願いします」と名詞にすると、相手もどこまですればいいのか明確になり、言い訳もできなくなります。

「2.日時は時間で決める」というのは、締め切りを決めるときに、「今日中」や「今日の午前中」と曖昧にせず、必ず、時間まで指定するということです。例えば、「来週の木曜中まで」と頼んでいると、「来週の木曜の午後2時の会議まで」なのか、「来週の木曜の午後6時の勤務終了まで」なのかも分かりません。そのため、意味的ノイズが生じやすくなりますし、言い逃れされて、「今日の夜中の0時までに、メールで送ればいいんだと思ってました」と、言われたりします。しかし、「来週の木曜の午後12時まで」としっかり時間まで決めてしまえば、、相手もいつまでにすればいいのか明確になり、言い訳もできなくなります。

「3.3点セットでお願いする」というのは、頼む内容を3つに絞るのが、一番、記憶力や集中力的にもミスがなく、質と速さのバランスが兼ね揃えられているため、合理的だからです。内容を3つに絞る理由は、次の2つの法則によります。

  • 最大数3の法則
  • 最小数3の法則

「最大数3の法則」というのは、「人間が一度に把握できる内容は、最大で3つが限界」だという考え方で、「MAX3」と呼ぶ方もいます。人間の瞬間的な記憶の限界の数は、心理学者のミラーによって明らかにされた「マジカルナンバー 7±2」というのが有名です。これは、人間がパッと瞬間的に提示されて覚えられる情報量の限界は、「7±2」であるというのが、実験的に明らかにされたためです。そのため、電話番号や郵便番号は、「7±2」に基づいた桁数になっています。しかし、その後の研究により、数字であれば7つを覚えられれるものの、アルファベットやひらがななどの文字なら6つ、単語なら5つであることが明らかになりました。また、人間の脳がラクに思い出せる範囲になると、3~4つにまで絞られます。そのため、人に話して印象に残させるための限界数は、3つであると考えられているわけです。

覚えやすい数の最大数を3とする考え方は、特に日本人には馴染み深く、日本人は「3大●●」という言葉を好みます。例えば、「世界三大美女」といえば、クレオパトラ・楊貴妃・小野小町の3人ですし、「世界三大夜景」といえば、香港・函館・ナポリが有名です。しかし実は、世界三大美女や世界三大夜景と言っているのは日本だけで、世界的に言われているわけではありません。しかし、3というのは非常に覚えやすいため、様々な場面で使われており、三種の神器(草薙の剣、勾玉、八咫鏡)、三英傑(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)、徳川御三家(水戸・尾張・紀州)、物質の三態(固体・液体・気体)、日本三景(松島、天橋立、宮島)、三国志(魏呉蜀)、ベンチャー三銃士(ソフトバンクの孫正義社長、パソナの南部靖之、HISの澤田秀雄)など、3というのは、覚えやすく、思い出しやすいと言えます。

「最小数3の法則」というのは、「人間を説得できるために必要な条件は、最小で3つが限界」だという考え方で、「MIN3」と呼ぶ方もいます。人間を説得するために必要な条件は、少なくとも3つ程度は必要だと言われており、そのことは「ベイス統計学」からも窺い知ることができます。「ベイズ統計学」というのは、主観的な確率を計算する統計学であり、次の3つの統計学のうちの1つに位置づけられています。

  1. 記述統計学
  2. 推計統計学
  3. ベイズ統計学

「1.記述統計学」とは、全ての人を調査して、全体の割合や確率を出す方法です。例えば、コインを1万回投げたときの表裏の出る確率を測定するとき、実際に、1万回投げて調べます。

「2.推計統計学」とは、「推測統計学」とも呼ばれており、フィッシャーによって体系化されました。推計統計学では、ある程度の人数や回数を調査して、全体の割合や確率を予想する方法です。例えば、コインを1万回投げたときの表裏のである確率を測定するとき、100回投げて、その結果から、確率を推測します。

「3.ベイス統計学」とは、主観的な確率を扱うため、フィッシャーにより「科学的ではない」として、最近まで闇に葬られていた統計学です。ベイス統計学は少し特殊で、コインの表裏の出る確率は、次のように、1回結果が分かるごとに、変動していきます。

  • 1-A.事前確率:コインには表と裏の2種類が出るが、出る確率は不明
  • 2-A.条件の1つめが判明:コインを投げたら、表が出た
  • 2-B.ベイズ更新を行う:結果に基づいて、確率を修正
  • 2-C.事後確率(条件付き確率):表が出たので、次も表が出る確率は、66.6%
  • 3-A.条件の2つめが判明:コインを投げたら、また表が出た
  • 3-B.ベイズ更新を行う:結果に基づいて、確率を修正
  • 3-C.事後確率(条件付き確率):表が出たので、次も表が出る確率は、75%

ベイス統計では、条件が1つ判明していくごとに「ベイズ更新」を行い、「ベイズ推定」を行い、主観的な確率を出していきます。そのため、表が連続で出ると「次も表が出る確率は高い」という結果になり、私たちが「経験的にこうだ」と思う確率に近くなるため、「主観確率」と呼ばれたりもします。ベイズ統計を使うと、少ない調査回数でも確率を予想でき、さらに、観測するたびに確率を調整できるため、近年、重宝されるようになってきています。ベイズ統計は、従来の統計学とは考え方が大きく異なるため、ベイズ統計を用いる人のことを「ベイジアン」と呼んだりもします。

しかし、現代人は推計統計学の方が馴染み深いですから、コインで何回表が出たとしても、「次に表が出る確率は50%だ」と考えやすいかもしれません。推計統計学では、「現象が確率を持つ」と考えるため、「コインが確率を持っている」と考えます。

一方、ベイズ統計学の場合は、「確率は個人の主観による」ため、結果が1つ分かるごとに更新されていきます。「確率は個人の主観による」という考え方は、次のように、現象と確率の関係が不安定な状況であれば、なんとなくイメージしやすいかもしれません。

  1. 性別には、男性と女性の2種類があるが、秋葉原に来る人の確率は不明
  2. 秋葉原に、男性が1人、入って来た
  3. 秋葉原に来る人は、次も男性である確率が66.6%
  4. 秋葉原に、また男性が1人、入って来た
  5. 秋葉原に来る人は、次も男性である確率が75%

そして、ベイズ統計では、選択肢がAとBの2択になっている場合は、AとBの回数による事後確率は、(A+1)/{(A+1)+(B+1)}で計算式で計算できます。例えば、「A.表」と「B.裏」や、「A.男性」と「B.女性」などの2択の場合、計算式を使えば、事後確率は、次のように予測できます。

  1. Aが1回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は66.6%
  2. Aが2回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は75%
  3. Aが3回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は80%
  4. Aが4回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は83.3%
  5. Aが5回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は85.7%
  6. Aが6回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は87.5%
  7. Aが7回、Bが0回の後の事後確率:次にAが出る確率は88.8%

こうして計算していくと、事後確率は、3回目までは5%以上増えて事後確率は80%になります、4回目以降は変化が少なくなります。そのため、ベイズ統計学的にも、3つの要素があればそこそこ予想でき、8割程度予想できると考えることができます。

ベイズ統計学からも分かるように、3つの要素があれば、対象の大まか情報をつかむことができるため、これを「最小数3の法則」と呼びます。「最小数3の法則」に従えば、どんな情報があったとしても、最低3つの情報があれば、大まかな輪郭をイメージできます。例えば、結婚相手について3つの条件を考えれば、あなたが、おおよそどんな人と結婚したいか、自覚できます。また、自己紹介するときも、自分の3つの特徴を相手に説明すれば、あなたの、おおよそのイメージを相手に伝えることができます。

3つの条件で対象を絞るのを上手に活かしたのが、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんです。孫正義さんは、学生のときに発明してお金儲けしようと思い立ち、忙しい勉強の合間に、1日15分だけ使って、1つのアイデアを出していました。しかし、1ヶ月、2ヶ月と経つうちに、なかなかアイデアが出なくなってしまいました。そのため、孫正義さんは、「発明するための方法論」を発明したのですが、その方法論が、3つの名詞を組み合わせて発明のアイデアを出す「組み合わせ法」という手法でした。「組み合わせ法」とは、例えば、「リンゴ」と「スピーチシンセサイザー」と「時計」の3つを組み合わせることにより、「のどかな田舎の朝を演出する音声付き目覚まし時計」というアイデアを作る方法です。そして最終的に、「関数電卓」と「辞書」と「スピーチシンセサイザー」を組み合わせて、「自動翻訳機」のアイデアを生み出しました。そして、自動翻訳機の発明をシャープに売ることで、最終的に1億円を手にすることができたわけです。この「組み合わせてアイデアを出す手法」は、デイル・ドーテンさんのベストセラーとなっているビジネス書『仕事は楽しいかね?』でも紹介されていますが、3つの組み合わせを使った孫正義さんの慧眼には、恐れ入るところがあります。

以上のように、3つの条件があれば、大まかなことをイメージできるため、速さと内容の兼ね合いから考えると、3点にまでドリルダウンして頼むのがベストだと言えるでしょう。例えば、毎月の報告書に含める項目を頼むときに含めてもらう項目を3つに絞って、「新規顧客の獲得数」と「既存顧客数の推移」と「顧客獲得に使った予算」の3つにすれば、「最小数3の法則」のとおり、資料としても大まかな情報をつかむものが作成できます。また、「最大数3の法則」の通り、3つのお願いならば、頼まれた側も、充分、覚えられる範囲です。

人に上手に頼むうまい頼み方は、とにかく、意味的ノイズを減らすことです。そうすれば、自ずと、齟齬の少ない頼み方ができるようになり、上司と部下の関係も良好になります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする