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わらしべ長者としての仕事やビジネス
わらしべ長者は、「稲の藁」から物々交換を繰り返すことにより、爆速で、ありえないほどの富を手に入れた昔話です。その「わらしべ長者」になぞらえた仕事やビジネスのやり方が、「わらしべ長者戦略」と呼ばれるものです。
わらしべ長者戦略とは、「わらしべ長者方式」と呼ばれたりもしますが、「わらしべ長者戦略」と言われると、昔話の物々交換のイメージから、より価値のあるものと物々交換していく贈与経済的な戦略だと思われがちです。しかし「わらしべ長者」の昔話の中には、ギフトシェアとしての物々交換だけでなく、実際には、次の2つの意味合いが含まれています。
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「より価値のある物と交換していく」というのは、少しずつ価値のあるものへとステップアップして目的にたどり着く、という意味です。例えば、「黄金」を手に入れるために、「石 → 鉄 → 鋼 → 銀 → 黄金」という風に、ステップアップしていきます。
「思いも寄らない物と交換していく」というのは、全く次元の異なるものと交換していくことで目的にたどり着く、という意味です。例えば、「黄金」を手に入れるために、「石 → 風船 → 肉 → 銅像 → 金」という風に、全く異なるものと交換していきます。
わらしべ長者戦略とは、「わらしべ長者」の昔話の中に含まれる、「より価値のある物と交換する」という意味と「思いもよらない物と交換していく」という意味の、2つの意味が含まれた戦略です。そして、わらしべ長者戦略の中でも特に大切なのが「思いもよらない物と交換していく」という戦略です。
わらしべ長者のビジネスでのやり方のコツ
わらしべ長者戦略のやり方をビジネスで用いるためのコツは、「思いもよらない物と交換する」ために、いつでも交換してもらえるような優位性を保つことです。そして、いつでも交換してもらえる優位性を保つために、特定の分野でNo.1になって信頼を得るようにします。
特定の分野でNo.1になるコツは、「一見するとあまり価値のないような競争率の低いところから始める」ことです。普通は、価値のないものというのは、全くお金にならないこともおおく、仕事やビジネスとは縁遠いものです。しかし、そのような価値のない分野は、誰もわざわざ取り組もうとしないため、簡単に1番になることができます。
例えば、あなたが、毎朝早起きして、近所のゴミ拾いを始めたとします。しかし、ゴミを拾っても1円にもならないですし、それなのに朝早起きしたり、手が汚れるのはみんな嫌ですから、簡単に「町のゴミ拾いで1位」になれます。そして、1位になったときに、「自分は1番である」と名乗りを上げることで、その信頼を武器にしてい、次のステップへとつなげます。わらしべ長者戦略では、その後も、No.1になる分野を増やし続けて自分のビジネスの価値を高めていき、最終的に、本当に欲しい物を手に入れるのが目的です。
わらしべ長者戦略だと、小さい目標をいくつも踏まなければいけないため、一見、「ゴール=目的地」まで遠回りしているように見えるかもしれません。しかし、途中で無駄な争いをする必要がない分、実は、ゴールに最短で到達する方法になりえるわけです。わらしべ長者のやり方はを、ビジネスのやり方で活用している人の中で、近年、最も、大きな躍進を遂げたのが、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長で、Yahoo!Japanの取締役でもある孫正義さんです。孫正義さんは、次のようなわらしべ長者のやり方で、名乗りを上げていきました。
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孫正義さんは、普通の企業の何倍ものスピードで、通信会社でナンバーワンとなる目標を達成していきました。しかしその裏では、しっかりとわらしべ長者のやり方で会社の価値を高めており、コムデックスを買収してIT業界を代表する経営者や有力者たちとの人脈を一気に強化したり、ADSL事業者や固定電話事業者として成果を出していました。そして、その実績や信頼といった信用を担保にして、企業の買収の交渉を成功させたり、金融機関からの巨額の資金調達を可能にしていったりしたわけです。
わらしべ長者の仕事のやり方のコツ
わらしべ長者戦略のやり方は、ビジネスを経営している方にしか役立たないように思われがちですが、実際には、どんな目標にも活用できるため、個人の仕事にも活用できます。わらしべ長者方式は、スケールの大小は関係なく、もちろん、その人が今持っている経験やスキルも一切関係ないため、誰でも実践することができます。
実際に、わらしべ長者のやり方で、自分の仕事の夢をわずか3年ほどで適えた専業主婦は、次のような方法で、夢を適えました。
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この専業主婦の女性は、わらしべ長者にもとづいて、まずは、何かのカルチャーセンターの講師になることを目標にしました。そのため、カルチャーセンターのパンフレットを片っ端から集め、競争相手が少ないマイナーな分野にはどんな講座があるか、徹底的に調べるところから行動を起こしました。その結果、最初は何の実績もない平凡な主婦が、最短最速で「カリスマ主婦が教える料理教室」というゴールに到達できたわけです。
わらしべ長者戦略とは、「ゴール=大きな目標」を直接目指すのではなく、「中間ゴール=小さな目標」をいくつもおいて、それを1つずつ確実に達成していく方法です。そのため、「今の自分の力でなんとか達成できて、なおかつ、ここを押さえれば大きく飛躍して目的地に近づける」という「飛び石」となるポイントを、いかに見つけることができるかにかかっています。料理教室の講師になった主婦にとっての飛び石は、「カルチャーセンターでの手作りせっけんの講師」でした。
同じように、世界的デザイナーとして有名な「佐藤オオキ」さんも、上手に飛び石を使った人物です。佐藤オオキさんといえば、2006年のNewsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」の1人としても選ばれたことのある世界的デザイナーですが、始めの頃は、小さな雑居ビルでアルバイトする一学生であり、デザインの世界に有力なコネや人脈を持っていたわけでもありませんでした。しかし、世界最大級の家具見本市である「ミラノサローネ」への出展を飛び石として定め、ミラノサローネでの特別賞の受賞をきっかけとして、本場ミラノでも認められ、さらにデザイン界最高の栄誉とされる「EDIDAデザイナー・オブ・ザ・イヤー」を史上最年少で受賞しました。佐藤オオキさんは、わらしべ長者のやり方を使って、わずか数年で、一学生から世界的なデザイナーへと、最速で到達できたわけです。
わらしべ長者の仕事のやり方のコツは、「この石を踏めば、世の中に一気に知れ渡ることができる」という一点を、まず探し出すことです。そのため、最終目標を定めつつ、まずは、中間ゴールとしての小さな、目標である「飛び石」を探すことに集中しましょう。そして、きちんと飛び石を踏んだ後の、ここぞというときに、しっかり「名乗り」を上げるようにしましょう。