定例会議は無駄なのか? 定例会議の内容と進め方

定例会議は無駄なのか?

定例会議は無駄なので、定例会議をなくした方が良いと考える方が、最近増えています。実際、「会議は1円足りとも生み出さない」と言われていますし、1時間の会議を10人で行うと、10時間分が無駄になります。しかも、会議の時間だけでなく、会議の準備にも時間を要しますから、かなりの損失です。大手の企業になると、週1回行われるトップの定例会議のために、下位組織の会議も複数必要となってくるため、1年で合計30万時間が失われているという報告もあります。そのため、例えば、Facebookの会社では、会議を禁止にする曜日を作り、水曜日は定例会議なしの日にして、業務の効率化を図っています。

「会議」と似たような言葉に「ミーティング」という言葉ありますが、2つは、次のように異なります。

  • ミーティング:「話し合う」ことがメイン
  • 会議:「決める」ことがメイン

「ミーティング」は、話し合うことが目的なので、何かを決める必要はありません。そのため、食事をしながら話し合うときは「ランチミーティング」と言いますが、「ランチ会議」とは言いません。

「会議」は、意思決定を行うために行います。そのため、役員が集まるものは「取締役会議」と呼びますが、「取締役ミーティング」とは呼びません。

「会議」というのは、意思決定のために行われるため、本来は、脳が覚醒します。しかし実際には、居眠りしている人がいたり、落書きをしている人がいたりといったことがよくあります。定例会議で眠くなるということは、定例会議が上手に機能していないということですから、会議を見直す必要があるでしょう。そのため、アメリカのDropBoxの会社では、技術者の時間の半分以上が会議に費やされていることが分かったため、全く会議をしない時期を2週間作り、各定例会議の必要性を再考したこともありました。どうしても必要である「採用活動関連の会議」「経営者会議」「外部の利害関係者(ステークホルダー)との会議」は定例会議を禁止している間も行われましたが、一気に対応を図るあたりは、さすがDropBox、と関心させられます。

「社員の時間」は貴重ですし、ベンジャミン・フランクリンの言う通り、「時は金なり」ですから、確かに、無駄な定例会議は少ないに越したことはないです。一般的に、会議の種類には次の2種類があり、特に必要ないとされているのが「情報共有の会議」です。

  1. 意思決定の会議
  2. 情報共有の会議

「1.意思決定の会議」とは、定例会議で何かを決めるという明確な目的があります。ブレインストーミングも、最終的には結論を絞って決めますから、ブレストも意思決定の会議に含まれます。意思決定の会議の場合は、本来、決めるだけでなく、さらに「実行すること」「成果を出すこと」まで目指します。そのため、意思決定の定例会議を有意義に使うためには、定例会議内で、必ず、実行する算段まで決めます。実行する算段まで決めるためには、「いつ」「誰が」「何をする」の3つを曖昧にしたまま、意思決定の定例会議を終わらせないようにしましょう。

「2.情報共有の会議」とは、参加者の間で、情報を報告し合って、お互いに同じ情報を共有することが目的です。「全体の戦略共有会」や「社内の数値共有会」も、情報共有の会議に含まれます。なお、名目上は「意思決定の会議」として行われても、実行する算段まで決められない会議は、実質、「情報共有の会議」と同じです。

会議の中で、特に無駄だと考えられているのが、会議を「情報共有」の場として使っているパターンです。単なる情報共有であれば、わざわざ、会議で皆が時間を割いて集まる必要もありませんし、社内ネットなどで共有していつでも誰でも見れる状態にすれば、無駄な会議を省くことができます。

しかし、それでも、ほとんどの企業は、情報共有の会議のためにも、多くの時間を割きます。それはなぜなのかというのを示しているのが、プロジェクトマネジメントにおける「進捗会議」の考え方です。

定例会議の内容と進め方

定例会議の内容の中でも、プロジェクトにおけるタスクの進展具合を、皆で情報共有する会議を「進捗会議」や「進捗報告会議」と呼びます。仕事でプロジェクトを行う際は、細かなタスクに分け、各メンバーにタスクを割り振って進めていきますが、そのとき、次のような状況が生じやすくなります。

  1. メンバー個々で情報をやり取りしてしまう
  2. タスクの進展具合が予定どおりに進んでいないことがある

「1.メンバー個々で情報をやり取りしてしまう」という状況が起こると、メンバー間の共有している内容が、少しずつ異なってきてしまいます。そのため、AさんとBさんは知っていても、Cさんは知らないという状況が生じます。

「2.タスクの進展具合が予定どおりに進んでいないことがある」という状況が起こると、タスクの滞りが、他のタスクにも影響を及ぼしてしまいます。そのため、放っておくと、プロジェクトの進行にも大きな影響を与えてしまい、大幅に締め切りに遅れてしまったり、質の低い完成度で公開することになってしまったりします。

そのため、プロジェクトマネジメントの観点から考えると、プロジェクトを円滑に進めるためには、コミュニケーションネットワークを築き、メンバー間で情報を共有して伝達ミス防止を行い、タスクの情報を更新する必要があります。小集団におけるコミュニケーションネットワークの進め方には、大きく次の3つのパターンがあります。

1.チェーン型 2.ホイール型 3.全チャネル型
意思決定の速度 ×
伝達の正確性 ×
リーダー出現度 ×
メンバー満足度 ×

そのため、情報を共有するだけであれば、「全チャネル型」のコミュニケーションネットワークが、最も適していると言えます。そして、「全チャネル型」と同じコミュニケーションネットワークが、定例会議です。実際、会議というのは、伝達ミスを防ぎ、密にコミュニケーションを取るためには最適です。

また、コミュニケーションネットワークをは、本来、人数が増えれば増えるほど、伝達ミスが起きにくくなります。ネットワークにおいて、○の部分を「ノード」、線の部分を「エッジ」といいますが、人数が増えるほど、次のように、コミュニケーションネットワークのエッジの本数が増えていきます。

2人 3人 4人 5人
ノードの数 5
エッジの数 1本 3本 6本 10本

ノードが増えると、エッジの本数はその倍以上に増えていき、エッジの本数は、「n(n-1)÷2」となりまます。そのため、10人であればエッジは45本、20人であればエッジは190本にもなります。これだけのコミュニケーションネットワークを、会議せずに放っておくと、メンバー同士で勝手に情報をやり取りするだけになってしまい、大混乱に陥ります。

そのため、メンバー全員が一堂に会して、最新の情報にアップデートして、その場で全員が共有する方が、はるかにミスも少なく、効率的になるわけです。また、プロジェクトマネージャーとしても、1本1本のエッジを管理するよりも、会議でまとめて管理する方が、はるかに楽だと言えます。

なお、全チャネル型に近い形を、社内ネットワークを使って構築する方法も確かにあります。しかしネットワークだと、ただ情報の内容を眺めるだけになってしまうので、スマホをいじりながら見たり、音楽を聞きながら見るような輩を出てきて、情報共有に受動的となるため、不十分な伝達になりやすくなります。また、文字だけの報告や情報の内容では、その裏にある本質的な部分が見えないこともあります。一方、会議であれば、質問することで情報を掘り下げて考えることもできるため、情報共有に主体的に取り組むこともできます。

確かに、「意思決定の会議」なのに意思決定のない会議は必要ないですし、「情報共有の会議」なのに2時間も3時間も会議をする必要はありません。しかし、本当に必要な会議というのは、効率的な仕事を行うためには、欠かせないと言えます。

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