仕事の割り振りのコツ

仕事の割り振りのコツ

仕事をしていると、普通なら到底考えられないような仕事量を任されることがあります。しかし、社長や管理職の指示や、大口のお客さんからの依頼といったように、口が裂けても「できません」と言えない状況になることもあります。自分ひとりではとてもこなしきれない仕事量であれば、とるべき手段は、一つしかありません。それは、仕事をできるだけ、他の人に割り振ることです。

仕事を割り振るコツは、社会人にとって必須の技能です。こなせない仕事量であれば、目標達成のためには、同僚や部下に仕事を引き受けてもらうしかありません。仕事の割り振りを上手に、そして、なるべく不公平にならないように行うコツは、次の2点に気をつけることです。

  1. とにかく早く仕事を割り振る
  2. 仕事を細分化して、一緒に割り振りを決める

以上の2点について、詳しく説明していきます。

仕事を振るのがうまい上司と下手な上司の差

「1.とにかく早く仕事を割り振る」というのは、仕事が間に合いそうにないと判断したら、なるべく早い段階で仕事を割り振るようにします。一般的には、ギリギリまで一人で仕事を抱えこみ、最終的に、自分ではどうにもならなくなってから、人に頼むケースが多いものです。しかし、同僚や部下も、それぞれ担当業務を抱えてフル稼働しているのが普通な状態なのに、直前の切羽詰まった状況で仕事を振られても困ってしまいます。

そのため、ギリギリに頼むと、頼まれた方としても、「もう少し早く言ってくれれば、何とかなったのに」と不平や不満を抱いたり、「忙しくて無理です」とむげに断られたりしてしまいます。そのため、最初から自分で全部やろうなどと意地を張らず、できるだけ早くほかの人に仕事を割り振るのが、仕事を振るのがうまい上司であると言えます。

「2.仕事を細分化して、一緒に割り振りを決める」というのは、まず、割り振る仕事をなるべく小さくして、その後、どの仕事を任せるかを、皆で割り振ります。仕事を小さく分けるときは、「これくらいなら、無理なくできる」という仕事にまで細分化します。プロジェクトに部下が参加してくれるとしても、それぞれ、すでに他の仕事も同時にやっているのが普通ですから、手が空く時間も、それぞれ異なります。また、メンバーにより、経験やスキルも異なってきます。そのため、その人ができる範囲を超えた仕事を任せてしまうと、「こんなに大変な仕事を押し付けるなんて!」と、仕事量が多いことに不平や不満が爆発し、結局、納期が遅れたり、クオリティの低い仕事になってしまったりします。一方、「名簿を作るだけ」「10件、電話をかけるだけ」といったように、小さい仕事にしておけば、「空いた時間にやってあげようかな」と思ってくれます。

また、細分化した仕事は、可能であれば、メンバー全員を集めて、把握できるようにしましょう。まずは、細分化したタスクを、みんなで、ポストイットなどに書き出します。そして、それぞれが可能なタスクを自発的に選んでもらい、割り振るようにします。そうすれば、自分の可能な仕事量や仕事配分を選ぶことができますし、残りのタスクの数も、皆が把握しやすくなります。仕事量が多く、難易度の高い仕事であればあるほど、情報の共有は必須ですし、皆が一致団結して、一丸となって業務をする必要があります。全員が把握しやすい状況で仕事配分を行うことで、スキルや余裕時間の多い・少ないに関係なく、偏りなく仕事を割り振ることができます。

人に仕事を割り振った後は、あなたがやるべきことは、「プロジェクトマネジメント」として、進捗管理をするだけです。皆の仕事の様子を聞いてまわりながら、AさんやBさんといった協力者に、それぞれ、進展状況や、なんか困っていることなどを尋ねていきます。そして、進行のスピードが遅いものがあれば、他の人にも割り振ったり、あなたも手伝うなどして、全体がうまく進むようにします。「プロジェクトマネジメント」は、納期までに目標を達成できるよう、限られた予算や人員を使いこなすための、マネジメントの要であると言えます。

仕事の割り振りの多い・少ないの偏りや不公平にならないように

仕事の割り振りをするときは、多い・少ないの偏りがなく、なるべく不公平にならないようにします。しかし、上司が部下を何人程度管理できるかについては、人数に限界があると言われており、次のような考え方があります。

  • スパン・オブ・コントロール:5-7人
  • 10人管理法:10人
  • 2枚のピザ理論:5-8人
  • 1-3-9展開法:3人

「スパン・オブ・コントロール」は、「統制範囲の原則」や「管理スパン」とも呼ばれており、経営学の世界で最もよく知られている、管理できる人数についての理論です。もともとは、第一次世界大戦で活躍したイアン・ハミルトン将軍による軍隊における管理法が、後に、経営学へと導入され、1937年にギュリックが、さらに1956年にはアーウィックが提唱し、知られるようになり、「5つの組織原則」の1つである「スパン・オブ・コントロールの原則」として知られています。「スパン・オブ・コントロール」は、元々は、次のように提唱されていました。

  • どの上司も、5人以上、または6人以上の部下は直接管理できない

その後、仕事の量や質などの要因により、管理できる人数が異なることが分かってきており、「スパン・オブ・コントロール」の人数の部分は、様々な改変が行われています。その結果、現在の一般的な考えでは、「事務職であれば、5名~7名程度」まで管理可能だと言われており、「単純作業であれば20名程度」まで管理可能だとも言われています。そして、管理できる上限以上の人数を管理しようとすると、管理が不十分になり、その結果、プロジェクトにミスが生じやすくなったり、プロジェクトの進行が滞りやすくなります。

「10人管理法」は、ライフネット生命の元社長「出口治朗」さんの著書『任せ方の教科書』の中で紹介されている管理法です。出口治朗さんは、モンゴル帝国のフビライ(クビライ)皇帝が、軍隊を10名単位で管理していたのを参考にして、「10人管理法」を考案しました。モンゴル軍は、10人隊長が10名を管理し、100人隊長が10名隊長を10人管理し、1000人隊長は100人隊長を10人管理し、1万人隊長は1000人隊長を10人管理するという方法をとっていました。この10人単位の軍隊の編成は、古代より用いられており、古くはローマ時代の軍団の統制にも、十人隊長、百人隊長、千人隊長という名称が用いられていました。10人程度が密に把握することの限界であるということは、DMMの社長である「亀山敬司」さんも講演の中で述べており、G1ベンチャー2017の中で、「社員が100人でも1000人でも、結局、密に話す人は10人くらい」と語っています。

「2枚のピザ理論」は、Amazonの社長「ジェフ・ベゾス」が提唱しているもので、一度にチームとして動ける人数は、ピザ2枚の食事で足りる程度の人数であると語っています。ジェフ・ベゾスさんは、人数についてハッキリは語っていないものの、アメリカサイズのピザなので、おおよそ5~8名程度だと考えられます。

「1-3-9展開法」は「1-3-9のチーム作り」とも呼ばれており、1人の管理者の元に3人のリーダーをつけ、3人のリーダーにそれぞれ3名のメンバーをつけることで、1人の管理者が12人のメンバーを見ることができるシステムです。「1-3-9展開法」は、中小零細企業に向いているといわれており、社長の実務も多い零細企業では、実質、一度に3人を見るのが限界ではないか、と考えられています。また、「1-3-9展開法」は、教育しながら仕事を行う場合にも適しており、「BB制度(ビッグブラザー制度)」と呼ばれる知識のある先輩が後輩に知識を教えていく教育や、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」や「現任訓練」と呼ばれる実務をしながらの職業教育を同時に行う場合にも、一度に見ることのできる人数は、3人が限界ではないかと考えられています。DMM社長の亀山敬司さんも述べているように、大企業であれば、トップが見る管理職の人は、もう職業教育の済んでいる人が多いため、10人を管理することも可能です。しかし、最前線で働く社員になればなるほど実務にとわれる時間も多くなり、さらに新人の場合が多くなるため教育する必要もありますから、3人管理が効率的な場面が増えてきます。

一方、近年は、階層構造による管理ではなく、「効率化」の名の下に、人材管理のピラミッド構造を廃止して、各構成員が高い自律性をもって活動できるようにした「フラット化」を目指す向きもあります。例えば、1989年にはトヨタの組織改革でフラット化が行われて、次長・係長というポストを廃止しました。また、1995年のベネッセの人事改革では、「部長・課長・課長補佐・主事・担当員」という5階層を、「所属長・セクションリーダー・担当員」の3階層へと変更しています。「フラット化」は、たしかに意思決定が早くはなりますが、経営学の考えからすると、管理は不十分にならざるを得ないかもしれません。

以上のように、どの管理法で仕事の割り振りを行うかには様々な方法があり、一般的には「スパン・オブ・コントロール」にならって、7人の部下までとの作業がいいとされています。しかし、実質はプロジェクト以外の業務も担当しながら、プロジェクトのタスク管理をすることが多いため、「1-3-9展開法」をベースにした、「管理者+3人」による仕事の割り振りが、最もミスも少なく、効率的かもしれません。

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