習慣化する方法

習慣化する方法

習慣化とは、「意志・やる気・根性などがなくても半自動的に行動できる状態で、思考しなくても半自動化で行動できる状態」です。人生の問題は、続けるだけで9割はうまくいくので、習慣化する方法を身につければ、今後の人生は勝ったも同然です。しかし一方で、多くの人が、習慣化しようとして失敗し、3日坊主で後悔した経験を持っていますから、「習慣化」と聞くだけで、嫌悪感や挫折感を示してしまう方も、少なくありません。

習慣化する方法のコツを学ぼうとするとき、皆が気にかけているのが、「一体、何日続ければ習慣化できるか」という、習慣化するまでの期間です。一般的には、習慣化するまでの期間には、次のような考え方があります。

  • 21日間で習慣化:マクスウェル・マルツによる1979年の著書『自分を動かす』より
  • 66日間で習慣化:ロンドン大学のフィリパ・ラリーによる2009年の研究より

特に、「21日間続ければ習慣化する」というのは日本でもよく知られているため、化粧品などのサンプルでも「まずは、3週間お試しください」というフレーズがよく用いられます。この「3週間お試し」も、使い続けることで習慣化をうながす21日間をベースにしています。

一方、習慣化にかかる期間は、習慣化したい内容によって異なるとも言われており、次のような説もあります。

  • 行動習慣は1ヶ月:読書・勉強・ブログなど
  • 身体習慣は3ヶ月:ダイエット・運動・早起きなど
  • 思考習慣は6ヶ月:論理的思考・プラス思考など

この考えで行くと、習慣化するためには、約1ヶ月間の21日間や、約2ヶ月間の66日間よりも、さらに長い期間が必要となることになります。ちなみに、フィリパ・ラリーの研究で調査対象となった習慣は、食べる・飲む・運動・瞑想といった「身体習慣」でした。また、習慣化までの平均は66日間でしたが、個人差も大きく、最小18日~最大254日と、人によってバラバラでした。そのため、最大で254日間かかると考えれば、「8ヶ月~9ヶ月程度、習慣化の期間が必要な場合もある」と言えるかもしれません。

また、その他の研究でも、習慣化するまでの日数や期間はまちまちなため、結局のところ、「習慣化にはたくさんの時間がかかる」という程度しか分かっていません。そのため、習慣化する方法やコツは、続ければいつかは習慣になるので、「とにかく続けやすい仕組みを作る」ということに尽きます。

習慣化する方法のコツ1「自分でルールを作る」

習慣化する方法のコツは、いかに仕組みの力に頼るからです。自分で仕組みやルールを作ってそれに従うだけなら、あまり意志ややる気がないときでも、何も考えずに行動できます。そのため、行動も続けやすく、習慣化しやすくなります。実際、自分の中でルールや仕組みを決めるかどうかで、次の研究のように、最終的な習慣化が異なってきます。

  1. 「月・水・金は、仕事前に1時間ジムで運動する」とルールを決めたグループ:数カ月後のジムの継続率は約9割
  2. ルールを決めずにジムで運動したグループ:数カ月後のジムの継続率は約4割

そのため、「自分でルールを作る」のをあらかじめしておくと、習慣化する可能性が2倍以上に高くなります。もし習慣化したいことがあるなら、まずは、習慣化するための仕組みやルールを決めてしまいましょう。なお、仕組みやルールの作り方のコツは、次の2点です。

  1. やる気がほとんど必要のないルールを作る
  2. やる気が高まりやすいルールを作る

「1.やる気がほとんど必要のないルール」というのは、「こんなの、誰でもできるだろう」というくらい小さな行動のルールにするということです。例えば、習慣化したい行動を、次のような小さな行動にします。

  • 毎日本を読む:毎日1ページだけ本を読む
  • 月・水・金にジムに通う:月・水・金にジムの前まで行く
  • 毎日掃除をする:毎日雑巾を持って1ヶ所だけ拭く

行動は、とにかく小さい行動にして、やる気や意志の必要がないレベルにまで落とし込みます。もし「毎日1ページだけ本を読む」のが無理なら、「毎日1文だけ本を読む」でも構いません。また、もし「月・水・金にジムの前まで行く」のが困難なら、「月・水・金にジムのある駅の改札口まで出る」でも構いません。とにかく、限界まで意志の力の必要ないルールを作りましょう。

人が行動するときに一番力が必要になるのが、まず腰をあげて行動に「初動」です。そのため、「初動」に意志の力が必要なけようにしれあげれば、後は、自然と継続しやすくなります。とりあえず本を1文だけ読んだ後は、そのまま本を読み続けたければ読み続けてもいいですし、とりあえずジムの前まえで行った後は、せっかくだからジムに入っても構いません。しかし、案外、初動さえ乗り切れば、ほとんどの行動は自動でおこなれます。そのため、行動のルールを作るときはは、極限までやる気がなくてもできるルールにしましょう。そうすれば、後は自然と、ルール以上の行動を取ってしまい、自然と習慣化していくことができます。

「2.やる気が高まりやすいルール」というのは、簡単に成果を得やすい小さい目標を作るということです。小さい目標の例として、例えば、行動科学マネジメントで有名な石田淳さんの推奨している「ポイントカード法」があります。ポイントカード法は、著書『すごい実行力』の中で推奨されてており、大きな目標に対して小さな目標を作り、達成できるごとに、自作のポイントカードにシールを貼ったり、ハンコを押していったりします。大きな目標と小さな目標の作り方は、例えば、次のような作り方があります。

  • 大きい目標「早起きする」:時間どおり起きたらシール1枚、時間前に起きたらシール2枚
  • 大きい目標「ジムに通う」:ジムのある駅で降りたらシール1枚、ジムの前までいったらシール2枚、ジムに入ったらシール3枚
  • 大きい目標「掃除する」:雑巾を持って1ヶ所だけ拭いたらシール1枚、床も拭いたらシール2枚、一部屋掃除したらシール5枚
  • 大きい目標「断捨離」:1つ捨てたらシール1枚、2つ捨てたらシール2枚、3つ捨てたらシール3枚

そして、シールやスタンプが10枚たまったり、30枚たまったりしたら、自分にごほうびを用意します。小さな目標を作るコツは、先ほどの「やる気がほとんど必要のないルール」と組み合わせることです。そうすれば、ポイントも溜まりやすくなり、シールを貼るのが楽しくなって、行動を続けやすくなります。行動を続けていれば、その行動は、自然と習慣化していくわけです。

習慣化する方法のコツ2「他人のパワーを使う」

今までの習慣化は、自分でできる習慣化ですが、さらに、「他人のパワーを借りる方法」もあります。それが、他人のパワーを借りることにより「逃げられない状況を作る」ということです。逃げられない状況を作るには、次の2つがあります。

  1. マンツーマンになる状況を作る
  2. 周囲に公言する

「1.マンツーマンになる状況を作る」とは、1:1での約束をして、逃げられない状況にすることです。代表的な例が、パーソナルトレーニングのRIZAPです。RIZAPで、パーソナルトレーナーと契約してしまうと、非常に高額なのでもったいないですし、自分が来るまでトレーナーに待たれていると思うと、行くしかありません。

パーソナルトレーニングは高くつきますが、その分「行かざるを得ない仕組み」を作ることができるため、自分への強制力を働かせることができます。1:1の約束というのは、工夫次第でいろいろ作ることができ、強制力を働かすことができます。例えば、部屋をきれいにする習慣をつけないなら、「土曜日の午後1時から断捨離するんだけど、手伝ってくれない? 後で生ビール2杯、おごるから」と頼み、毎週、誰かと断捨離すれば、断捨離が習慣化していきます。掃除を手伝ってもらうというのは、まさに掃除のパーソナルトレーナーと契約しているようなものですし、生ビール2杯を払って雇っているのと同じような状況といえます。

「2.周囲に公言する」とは、「3ヶ月で10kg痩せる!」「英会話の教室に行くA」などと、周囲に公言することで、失敗したら恥ずかしい状況、やらないとかっこ悪い状況に、自分を追い込むことです。実際、周囲に言いまくって自分を追い込む方法で、2年間で26kgのダイエットに成功した方もいます。

周囲に公言する方法は、工夫次第でいろいろ作れます。例えば、部屋をきれいにしたいときは、周囲に「部屋をきれいにするから、週末、うちで宅飲みしない?」と公言したら、掃除をがんばれますし、毎週宅飲みしていれば、部屋掃除が習慣化していきます。また、英語の勉強をしたい場合は、海外からのお客さんが来るときに自ら接待役を申し出て、職場で公言してしまえば、否が応でも、英語の勉強を習慣化させることができます。早起きを習慣化したければ、自ら早番を引き受けるという方法もあります。自分ひとりの力で習慣化するのが困難ならば、周囲からの無言の圧力を利用すればいいわけです。

周囲に公言するという手法を、ビジネスに上手に活かしているのが、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんです。孫正義さんのビジネス手法の一つに、「発表経営」と言われる手法があります。発表経営とは、まだ計画が煮詰まっていない段階から記者会見を開くことで、社員全員を、一つの目標へ一致団結して突き進むしかない状況に追い込む手法です。

孫正義さんの「発表経営」で特に有名なのが、「Yahoo!BB」の立ち上げのときです。「Yahoo!BB」は、ほぼ孫正義さんのみの独断専行で決まったプロジェクトでしたが、まだソフトバンクに通信技術のノウハウもほとんどなく、社員向けのクローズドサービスでテストしている段階で、すでに「ソフトバンクが通信事業に本格参入!」と公表されていました。また、テスト設置時に韓国製の格安モデムが熱で溶けている状態だったにも関わらず、「100万人初期費用無料」という大風呂敷を広げてしまっていました。

「Yahoo!BB」は、明らかに間に合うことのない無茶な計画で、実際にサービス開始できるかどうか怪しい状況だったため、社員はまさに沈みゆく船に乗せられている状態でした。そのため、懸命な社員は、次々にフェイドアウトしていくという異常な状態でした。しかし、すでにサービスの提供を記者会見で公表してしまっており、ルビコン川を渡ってしまったような状況で、ソフトバンクの社員は、背水の陣に立たされていたわけです。結局、社員も引くに引けず、連日連夜徹夜を続け、倒れて病院に運ばれる社員も出しながら、なんとかプロジェクトを達成したのでした。孫正義さん以外の皆が実現不可能だと思っていたサービスが成功したのも、まさに「周囲に公言する」というノウハウを活用したためです。

習慣化する方法や、困難を乗り込える方法は、以上のように「自分でルールを作る方法」と、「他人の力を借りる方法」の2種類があります。「自分でルールを作る方法」は、ルールに縛られるのを好む、マゾなMの人に向いています。一方、「他人の力を借りる方法」も、一見、マゾなMの人に向いているように見えますが、実は、プライドの高いサドなSの人の方が、失敗を恐れ、その恐れをバネにして踏ん張れるため、「他人の力を借りる方法」は、Sの人の方が向いています。自分の性格もかんがみながら、自分にあった習慣化する方法を選ぶといいかもしれません。

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