アイデアの作り方

アイデアの作り方

アイデアの作り方といっても、いろいろな方法論があります。しかし、そんな中でも、実践的で、一人でもできる方法として有名なのが、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんが開発した「アイデア発想法」です。

孫正義さんは、留学中の大学生時代に、1日5分だけ発明のアイデアを出して、お金を稼ごうと考えました。しかし、1ヶ月、2ヶ月と続けていくうちに、だんだんとアイデアがでなくなってしまったため、「発明のためのアイデアの作り方」を、発明しました。

孫正義さんは、発明のアイデアをいろいろ出している中で、アイデアの作り方には、次の3種類があることを発見しました。

  1. 水平思考法
  2. 組み合わせ法
  3. 問題解決法

「1.水平思考法」とは、物事を様々な視点から見ることで、新しい発想を導くアイデアの作り方です。「水平思考」という言葉自体は、ヨーロッパのマルタ共和国の学者である「エドワード・デボノ」により、1967年頃に提唱されています。「水平思考」による問題解決法は、「垂直思考」との対比から、次のように説明されます。

  • 垂直思考(クリティカルシンキング):物事を深堀りしていく思考法
  • 水平思考(ラテラルシンキング):多様な視点から見ていく思考法

「垂直思考(クリティカルシンキング)」は、特定の条件のもとで、その問題を深堀りしていく思考なので、論理を深めるのに有効な方法です。垂直思考は、例えるなら、すでに掘られている穴を、さらに奥へ奥へと掘り進めるような思考法です。「人は枠があるからアイデアを発散しやすい」という謳い文句がありますが、アイデアというのは、あらかじめ枠や条件が決まっていると、逆に、いろいろな発想が出やすくなるという特徴があります。例えば、将棋や囲碁などのテーブルゲームも、ルールが決まっていて自分の行動が絞られている分、逆に相手の行動も絞られているため、いろいろ相手の行動を予想をすることもでき、さまざまな戦略を創造することができるわけです。

「水平思考(ラテラルシンキング)」は、様々な条件を想定して、問題を解決しようとする思考なので、新しいアイデアを出すのに有効です。水平思考は、例えるなら、すでに穴が掘られていても、さらに新しく穴を、次々に掘ってみるような思考法です。水平思考は、既存の条件やルールに囚われずに考えるため、自由に発想できる分、逆に、収集がつかなくなってしまうこともあります。

孫正義さんの「水平思考法」は、水平思考の「刺激的発想法」に近い考え方で、物事の要素を変えることで、新しいアイデアを生み出します。例えば、四角いものを丸く変えてみたり、白いものを赤くしてみたり、小さなものを大きくしてみたりと、要素をチェンジすることで、新しいアイデアを生み出します。

「2.組み合わせ法」とは、2つ以上の単語を組み合わせて、そこから新しいアイデアを作り出します。例えば、「りんご」と「時計」から、リンゴ型の時計を考えたり、時間になるとりんごジュースの香りのする目覚まし時計を考えたりします。

ちなみに、iPhoneが開発される前、実は、孫正義さんはスティーブ・ジョブズに直接会いに行ったことがあり、新しい携帯電話のアイデアを提案していました。そのとき孫正義さんがジョブスに見せたものは、「組み合わせ法」により発想されたiPhone風のアイテムで、当時大人気だった携帯音楽プレイヤーのiPodに、電話の機能をつけた携帯電話でした。

一方、スティーブ・ジョブズは、「組み合わせ法」ではなく「水平思考法」で、iPhoneのデザインを考えていました。スティーブ・ジョブスは、それまでの携帯電話にあった「ボタンがある」という機能を排除して、「ボタンがない」携帯電話を作ろうと考えていたわけです。実際、iPhoneが出る2007年6月まで、iPodはホイール式のボタンでした。iPodにタッチスクリーンを採用したのは、iPad touch第1世代が初めてで2007年9月発売、iPod nanoも第6世代からタッチスクリーンになっていますが2010年9月発売です。

「3.問題解決法」とは、何かの問題を考えながら、ノートに書き留めたり、情報収集したりしていると、あるとき、ふと、それらが有機的に結びついて、解決が思いつくという、ひらめきによるアイデアの作り方です。ドイツの心理学者カール・ビューラーの言う、今まで分からなかったことが瞬間的に分かるようになる「アハ体験」と似た感覚であり、気づきを得るような、アイデアの作り方です。

アイデアの作り方:1.水平思考法

アイデアの作り方の中でも、「水平思考法」と「組み合わせ法」は、ルールがはっきりしているため、アイデアを作りやすい方法です。

特に「水平思考法」は最も簡単です。モデルとなるものを決め、その要素の一つ一つを抜き出していき、変更していくだけで、全く新しいものを生み出すことができます。

例えば、モデルが「冷蔵庫」で、冷蔵庫の要素には、「四角い」「冷たい」といった要素があったとします。

あとは、冷蔵庫の「四角い」を変更して、「形がない」にすることで、新しいアイデアを創造することもできます。形がないものであれば、例えば、ジェル状の冷やすものなども考えられるでしょう。また、ゴルフボールサイズの小型の冷却装置を作って容器に詰め込めば、容器の形に囚われず冷やすことができるかもしれません。

また同様に、冷蔵庫の「冷たい」を変更して、「熱い」や「湿度が高い」や「室温と一緒」などに変更して、新しいアイデアを創造することもできます。熱い箱であれば、例えば、真夏の車の熱い車内や利用しての低温調理グッズや、真夏の熱い車体を利用してのアウトドア用料理器具なども考えられるかもしれません。

「水平思考法」は、要素を書き出す手間はあるものの、比較的、実行しやすいアイデアの作り方です。

アイデアの作り方:2.組み合わせ法

アイデアの作り方で、「組み合わせ法」は、「水平思考法」の次にアイデアを作りやすい方法です。「水平思考法」と比べると、「組み合わせ法」は、突拍子のない2つを組み合わせる必要があるため、やや柔軟な思考が要求されますが、やり方も明確なため、実行しやすいです。

「組み合わせ法」であれば、適当に名詞や動詞や形容詞で単語カードを作り、それをランダムで組み合わせることで、全く新しいものを生み出すことができます。孫正義さんは、単語をコンピューターに入れて、ランダムに組み合わせを表示させることで、アイデアを出していました。しかし、もっと手軽にやってみたいなら、次のような方法もあります。

  1. くじ引きを使う方法
  2. ノートを使う方法
  3. 百科事典を使う方法
  4. ネットを使う

「1.くじ引きを使う方法」は、そのまま、単語を書いた紙を、くじ箱をに入れて、自分で引く方法です。2枚引いて組み合わせを作ってもいいですし、3枚以上引いて組み合わせを作っても構いません。

「2.ノートを使う方法」は、2冊以上のノートのそれぞれに言葉を書いておき、それぞれをパッと開いて、その単語の組み合わせを元にして、新しいアイデアを創造する方法です。ノートだけでなく、単語帳などを使って作ることもできます。

「3.百科事典を使う方法」は、百科事典やイミダスや辞書を使い、目をつぶって本を開いてページのどこかに指をおき、目を開いて指差していた単語を使って、アイデアを創造します。アナログな方法ですが、百科事典は単語数も多いため、意外に、実用性の高い方法です。手元に百科辞典がない場合は、単語だけ拾えればいいので、英和辞典や、独日辞典、英単語本などでも構いません。事典であれば、たくさんの単語が網羅されているため組み合わせ法を行いやすいですが、小説や実用書などの本を数冊、机の上に並べておき、目をつぶって本を1冊取りって選ぶ方法や、図書館で目をつぶって本を1冊取って選ぶ方法でも、行うことができます。本を数冊使う場合は、もうひとり協力者がいれば、本を選んだり開いたりするときに、目をつぶっていてもサポートしてもらえるので、スムーズに組み合わせ法を行えます。

「4.ネットを使う」というのは、ネットでランダムに単語をピックアップしてくれるサイトを利用します。「ランダム検索」とネットで検索してみると、ランダムに検索できるサイトがいろいろ出てきますので、気に行ったものを使ってみましょう。また、みんな大好き「Wikipedia」でも、「http://ja.wikipedia.org/wiki/Special:Randompage」にアクセスすると、ランダムにWikipediaの記事を表示してくれます。

アイデアの作り方:3.問題解決法

アイデアの作り方の中で、「問題解決法」は、一番難しい方法です。というのも、「問題解決法」は、ひらめきに頼る面が大きいため、コントロールするのが難しいからです。しかし、「問題解決法」のひらめきの確率を挙げる方法もあります。

普通は、ひらめきに頼ろうと思って何時間も頭をひねっても、なかなか知恵というものは出てきません。そのため、良いアイデアが出る瞬間を、常に待つ必要があります。しかし、ただ待つだけでは、何の解決にもなりません。そのため、なるべく、パッとひらめきやすい状況を作るわけです。ひらめきやすい状況を作るためには、次の2つの方法があります。

  1. 問題を具体的にする
  2. 何度も問題を認識するようにする

「1.問題を具体的にする」とは、漠然とした問題だと、解決策を思いつきにくいためです。例えば「お金を稼ぎたい」という問題だと、漠然としているため、問題が定まらず、アイデアもひらめきにくくなります。しかし、「本業以外で、月に50万稼ぎたい」と目標を具体的にすると、問題が明確なため、脳が問題解決しようとして、思考を開始します。

「2.何度も問題を認識するようにする」とは、全く問題を意識しないと、ひらめく以前に、問題自体を忘れてしまうためです。例えば、1年の始まりの元旦や誕生日に、「今年は、こんな1年にしよう」と目標を立てていたとしても、ほとんどの人は、1週間も経てば、立てた目標を忘れてしまいます。いくら、潜在意識でのひらめきに期待するといっても、目標を全く忘れてしまっていては、アイデアがひらめく以前の問題です。そのため、ひらめくきっかけを与えられるよう、絶えず、目標を意識化しなければいけません。

こまめに意識化しておくと、常に頭の片隅に問題のことが残っている状態になり、食事中や電車での移動中にも問題を考えたりします。そうしていると、目に入ってきた情報や、耳から入ってくる人の話などをきっかけにして、一気にひらめく体験を得ることがあります。こまめに問題を意識化するためには、次のような方法があります。

  1. 紙に書いて貼っておく
  2. 願掛けする
  3. リマインダー機能を使う

「A.紙に書いて貼っておく」とは、紙に書いて、部屋やトイレなど、よく見る場所に貼っておくことです。こうすれば、問題を常に目にすることになるため、意識化するきっかけになります。紙に書きにくい恥ずかしい願い事の場合は、名刺やポイントカードにこっそり書いておき、財布にしのばせておいても構いません。また、紙で貼るだけでなく、文字を画像にしてパソコンやスマホの壁紙にしてみたり、机の上の写真立てに飾ってみたりしてみましょう。本気で解決したい問題があるならば、相田みつをさんの名言を飾るだけでなく、自分の目標も飾るようにするべきです。

「B.願掛けする」とは、神社やお寺でお参りしたときに願いごとを心の中で唱えて、意識化することです。家の近所を探せば、小さいお堂やお地蔵さんは案外あるものですから、そういう場所にこまめに赴き、願掛けしましょう。また、通勤や通学途中にある祠を利用しても構いません。もっと手軽にしたいなら、家の神棚や仏壇でお参りしながら、自分の願い事を意識化するという方法もあります。

「C.リマインダー機能を使う」とは、パソコンやスマホのToDoアプリの、繰り返し表示できる「リマインダー機能」を使い、定期的に表示させて意識化する方法です。ToDoアプリには、毎朝9時や、毎週月曜日や、毎月1日など、期間を決めて繰り返して表示できるリマインド(通知)機能があります。このリマインド機能を利用することで、繰り返し、目標を意識化するわけです。リマインド機能は、GoogleのToDoアプリである「Google ToDo」でも細かく設定できるため、アプリを探すのが手間な方は、「Google ToDo」をとりあえず利用してみましょう。

あまり新しいアプリを増やしたくない方は、毎朝の目覚まし時計の起床音に、「自分の目標を読んだ音声」を使うという方法もあります。自分で目標を読むのが恥ずかしい方は、ネットで「テキスト読み上げサイト」で検索して、そのサイトで、自分の目標を合成音声で読み上げてもらいましょう。あとは、その音声データをダウンロードして、アラーム音に設定すればOKです。

「問題解決法」は、ひらめきによたる方法なので、いいアイデアが浮かばないときは、そのまま深追いはしないことが大切です。「ひらめき」は、天才のみの特権だと考えられがちですが、小さいひらめきは、きちんと手順を踏まえれば、誰にでも起こすことが可能なわけです。

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