ブレインストーミングとは? やり方と例

ブレインストーミングとは? 4原則とやり方

ブレインストーミングとは、「ブレーンストーミング」や「ブレインストーミング法」と呼ばれたり、「ブレスト」や「BS法」と略されることもある、アイデアを生み出す手法です。ブレインストーミングは、アメリカの大手広告代理店BBDOで副社長を務め、1966年に77歳で亡くなった「アレックス・F・オズボーン」により開発されました。また「ブレインストーミング」は、1942年に、オズボーンが出版した創造的思考に関する本の中で紹介されています。

ブレインストーミングは、おおよそ5-10名程度が集まり、集団でアイデアを出し合うにより、連鎖反応や誘発が起こることを期待します。そのため、「集団思考」や「集団発想法」、「課題抽出」と呼ばれることもあります。ブレインストーミングでは、「4原則」と呼ばれるルールが存在し、次の4つのルールを守りながら、アイデアを出し合います。

  1. 結論厳禁:判断・結論を出さない
  2. 自由奔放:粗野な考えを歓迎する
  3. 質より量:量を重視する
  4. 結合改善:アイディアを結合して発展させる

「1.結論厳禁」は、結論や判断をしないようにします。批判や否定は、判断になるのでもちろん禁止です。また同じように、肯定も判断になるので禁止です。ただし、否定からアイデアをさらに広げていくのはOKなので、「●●の条件は難しいが、どう対応していくか?」という発言は可能です。

「2.自由奔放」は、奇抜な考えやユニークで斬新なアイデアを重視します。新規性のあるアイデアは、笑いものにされることも多いですが、そのようはアイデアも自由に発言できる場であれば、アイデアは広がっていきます。

「3.量より質」は、アイデアの数を多く出すようにします。アイデアの数を多くするため、必然的に、問題を様々な角度から見ることができるようになります。

「4.結合改善」は、アイデアを組み合わせたり、部分的に変化させることで、アイデアの数を増やしていきます。他の人の意見に便乗していくため、他の人の意見を拡張する意味合いもあります。

ブレインストーミングは、発想を出すだけが目的なので、ブレインストーミングが終わった後は、最終的には、情報をまとめる必要があります。よく使われる手法は、文化人類学者の川喜田二郎さんがまとめた「KJ法」と呼ばれる手法で、アイデアをカードに記述し、グループごとにまとめてカテゴリー化していきます。なお「KJ法」は、考案者の「川喜田二郎」さんのイニシャルから取られています。

ブレインストーミング法のやり方の例

ブレインストーミング法のやり方の例として参考になるのが、ブレインストーミングをよく用いていた経営者である、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんです。孫正義さんの会議は、正確にブレインストーミングのルールには沿っていない部分もあるものの、ブレインストーミングに似た手法を使っており、次のようにして会議を行っていました。

  • 5人~10人程度で集まって会議を行う
  • 会議では、自由に意見を言い合う
  • 全員が持つ知識や情報を活用して、アイデアを生み出す
  • 孫正義さん自身も、参加する

以上の条件は、ほぼ、ブレインストーミングと同じです。しかし、このようなルールで会社や組織においてブレインストーミングを実践しても、実際には、全く盛り上がらなかったり、何もアイデアが出ないことがよくあります。

しかし、孫正義さんが参加するブレインストーミング風の会議では、無意味に終わることはありませんでした。孫正義さんの会議が活発だったのは、確かに、孫正義さん自身が、他人の力をフルに引き出す能力に長けていたという面もあります。しかしそれだけでなく、孫正義さんの例では、意見が出やすいように工夫されており、4原則のうちの3つに、次のようなやり方も加えられていたためです。

  1. 結論厳禁:ルールを破って、誰かの意見を批判したら、こっぴどく怒る。
  2. 自由奔放:何も思いつかないからと黙ったら、こっぴどく怒る。
  3. 質より量:どんな奇抜なアイデアや斬新な意見でも、どんどん口にする人は評価される。

「1.結論厳禁」では、ブレインストーミングのルールを破って他の人の意見を批判すると、孫正義さんに、こっぴどく怒られます。そのため、孫正義さん自身が審判や仕切り役としての役割も果たしており、ルールを厳密に管理していました。

「2.自由奔放」では、何も思いつかないで黙っていたら、孫正義さんに、こっぴどく怒られます。しかし、実際のところ、ブレインストーミングをしていて「とにかく考えろ」と言われたり、「なんでもいいから、意見を出すように」と催促されても、なかなか意見が出ないものです。逆に、発言が出るどころか、その場にいる人たちで顔を見合わせあったり、下を向いたりしてしまいます。特に、人は「言い出しっぺ」になるのを怖がります。もし、意見した内容が失敗に終わってしまうと、大抵の場合、言い出しっぺが責任を取らされます。そのため、人は、なるべく言い出しっぺになることを避けようとします。しかも日本人は、特に責任を恐れる気持ちが強いとされており、脳科学的にも、日本人の98%の人が、不安やストレスを感じやすい「セロトニントランスポーター遺伝子S型」を持っています。

しかし、せっかく、自分ひとりでは解決できない目標を話し合うために仲間を集めたのに、知恵を引き出すための議論や会話ができなくては、本末転倒になってしまいます。そのため、孫正義さんは、ブレインストーミングに皆が参加しやすいよう、自身も参加していました。また、参加する立場は、上司でも部下でもなく対等な立場として参加し、孫正義さん自身の意見も特別扱いせず、メンバーにもどんどん意見を言うように促していました。さらに、孫正義さんは、リーダーでありながら、最初に口火を切るようにして、自らが、まず、何かしらの案や意見を出していました。一番の権限と持つトップが、「言い出しっぺ」の責任をとれば、他の人は一気に気がラクになり、自分の頭で考えだすようになれるわけです。

「3.質より量」では、意見をたくさん出す人は、孫正義さんより評価されました。意見の内容ではなく、意見の量を評価されるため、参加しているメンバーは、どんどん意見を出そうという気にさせられます。

以上のように、孫正義さんのブレインストーミングでは、孫正義さんのが仕切り役になっており、ブレインストーミングに沿った方法であれば孫正義さんに評価され、沿わない方法であれば怒られるという特徴があります。そのため、厳密に言うとブレインストーミングとは異なるといえます。しかし、孫正義さんの場合は、ブレインストーミングを実践的に使いこなして形成で実績を挙げているため、孫正義さんの会議の事例から学べることは、多いかもしれません。

なお、孫正義さんのやり方で、特にブレインストーミングを活発にするために効果的なのが、「リーダー自ら口火を切って意見を出す」という方法です。そのため、もしあなたがリーダーや仕切り役であれば、自分の案の実現性や正しさにはこだわらず、むちゃくちゃな案や適当な意見でいいので、とにかく口火を切るようにしてみましょう。例えば、トップが方向性を示して、「新商品の価格は、1500円でどう?」とアイデアを出せば、他の人は、トップの意見を起点にして答えていくだけでいいので、発言しやすくなります。そのため、周りのメンバーから意見も出やすくなり、「原価の問題で1,500円は難しいですが、2,000円なら可能です」というアイデアが出たり、「材料の調達先を変えれば、1,500円でも可能だと思います」といった具合に、議論が展開していきます。あなたがする値段設定は、確かに、ベストではないかもしれませんし、的外れかもしれません。しかし重要なのは、他の人が自由に意見を言いやすい状況を作ることなので、例え的外れであったとしても、気にしなくて大丈夫です。

ブレインストーミング法のやり方が、なぜ大切なのか?

ブレインストーミング法のようにアイデアを多く出すやり方について疑問を感じる人も確かにいるでしょうし、「量を出せば、本当にいいアイデアに行き着くのだろうか?」と勘ぐってしまうかもしれません。確かに、「熟考に熟考を重ね、絞り出された1つの意見の方が素晴らしい」ということもありうるとは思います。例えば、熟考することの価値について、1921年にノーベル賞も受賞した天才物理学者「アインシュタイン」は次のように述べています。

  • 私は、地球を救うために1時間の時間を与えられたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう(アインシュタイン)

確かに、アインシュタインのような天才であれば、熟考することで良いアイデアが浮かぶかもしれません。しかし普通の人であれば、熟考しても堂々巡りになってしまうだけなので、多くのアイデアを出した方が、早く成功にたどり着けます。実際、孫正義さんも、質より量の考えを実践しながら成功してきた人物であり、世間では天才的な勘で成功を収めてきたように語られがちですが、実際は異なります。

例えば、孫正義さんは、大学時代に自動翻訳機を発明してシャープに売り込み1億円を手にしましたが、実は、その発明をするまでに、1年で合計250以上のアイデアを出し、「発明考案ノート(アイデアバンク)」としてまとめていました。発明に関して言えば、発明王と呼ばれたエジソンも、ジョークなども含めたアイデアを、生涯で3,500冊のノートに残しています。また、エジソンがノートに残すようになったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチがノートを残していたことに由来しており、レオナルドは、少なくとも現存するだけで5,000ページ以上のノートを残しています。

また、孫正義さんは、アメリカ留学後の1981年に日本で初めて起業しますが、実は、起業するのは、日本に戻ってから1年半も経った後です。なぜ起業までに1年半もかかったのかというのも、どの仕事を選ぶか、アイデアを出し、調べていたためです。孫正義さんは、何十年も戦う仕事の土俵選びのために、25項目の条件を挙げ、40の事業アイデアを出し、さらにその事業内容について事前調査を徹底的に行い、最終的に「パソコンソフトの卸し」を仕事に選びました。創業時の事業選びに関して言えば、Amazon創業者のジェフ・ベゾスも、複数の事業アイデアを出した後に、事業を開始しています。ジェフ・ベゾスの場合は、インターネット販売のアイデアを20出した後に「本」を売ることを選び、その後、準備期間に1年近くを費やしました。

さらに、孫正義さんは、多くの企業への出資や、共同資金による合弁会社の設立などから、投資の天才と思われがちですが、実際は、ただ単純に、無数の多くの事業に投資して、そのうちのいくつかが大成功を収めているだけです。そのため実は、投資に関しては、表に出ていない無数の失敗を重ねています。その孫正義さんの投資スタイルについて、ファーストリテイリング(ユニクロ)の社長の柳井正さんは、「100社買って99社失敗しても、1社で価値が1万倍になるような手法」と語るほど、多くの投資をこなしています。実際、成功している人物は多くの量をこなしているものですし、特に芸術家の場合は多作の方も多く、ベートーベンは生涯で650曲を作り、エジソンは1,300の発明をしました。また、ピカソに至っては、生涯で15万の作品を生み出したほどです。

そのため、ブレインストーミングを使って多くのアイデアを出すというのは、芸術家や経営者の成功例を、そのまま追体験できる手法と言えるかもしれません。「量より質」という言葉もありますが、逆のことを語っている方もおり、孫正義さんは「量は質に転化する」と述べ、英会話YouTuberのさわけんさんは「量は質に変わる」と語っています。「量より質」と「量は質に転化する」のどちらも、真実のいち側面を表しているとは思いますが、質の良いアイデアを出せずに行き詰まったときは、量に頼ってみるというのも、一つの手かもしれません。

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