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警戒心を解く話し方
警戒心を解く話し方は、社会人にとっては必須の技能といってもよく、お客さんへの営業や、取引先との交渉で必要です。しかし、警戒心を解く話し方を本で学んで実践しても、どうもうまくいかず、苦労している方も多いかもしれません。そんな方におすすめなのが、「あなたにとって警戒心の強かった人と、警戒心を感じなかった人を分析してみる」ということです。
人間とは不思議なもので、自分の行動の悪いところを見つけたり、改善するのは、なかなかうまく行きません。しかし、他人の行動はよく見えるものなので、他人の悪いところや良いところは、思いの他上手に指摘でき、「もっとこうしたらいいのに」という具体的な修正案も、すぐに思いつきます。
同じようにして、警戒心の強そうな同僚や、警戒心のなさそうな知人などの周囲の人を分析していると、面白いように話が転がる人と、会話に間に不気味な間の生じる人がいることに気づきます。会話が弾むかどうかの違いは、いろいろ理由もありますが、結局、しゃべりやすい・しゃべりにくいの差は、こちらの力量よりもむしろ、相手の警戒心の量に関係があることが、よく分かると思います。そして、警戒心のないしゃべりやすい人たちを見ていると、次のような共通点があることがわかります。
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こちらが警戒心を持たずに話し続けられる人というのは、自然体で、安心感があります。そのため、この人なら、何を聞いても怒らずに答えてくれるのではないか、と思わせるため、こちらも構えなくて済み、つい、友達同士のような気分になってしまいます。少々のことなら、言っても怒らないのではないかという気分にさせる雰囲気があるため、からかったりしてしまうこともあり、会話も転がっていきます。
一方、こちらが警戒心を持ってしまう人というのは、何を聞いても怒られるのではないか、と思わされます。最近は、自己主張を良しとするアメリカ式のコミュニケーション術がもてはやされる風潮が強く、日本式の謙遜や謙虚の美徳の影が薄くなってきていることもあり、口も出させない雰囲気を感じさせる人も多くいます。例えば、最近、twitterで歯に衣着せぬ発言でたびたび炎上している、ホリエモンこと堀江貴文さんや、百田尚樹さんのような方は、何を言っても怒られるような雰囲気を持っているかもしれません。
以上のような周囲の人の分析を元にして、そのまま自分に当てはめてみると、警戒心を解く話し方というのは、「何でも受け入れて、批判せずに答えるような、安心感を与える態度にある」と言えるでしょう。一方、警戒心を解くための方法を紹介している本などを読んでいると、様々なテクニックを用いるよう促していたり、「誠意が大事」と精神論に走りがちです。しかし、「自分がどのような人を警戒してしまうのか」を考えてみると、そのようなテクニックや精神論を用いる人は、逆に、警戒してしまうものです。テクニックを使われると、どうも胡散臭い詐欺師のように感じますし、誠意を押し付けてくるような人は一方的な人に感じるため、ついつい、避けようとしてしまうのが世の常です。
初対面でも警戒心を与えない人
芸能人や有名人、知識人というのは、偉ぶって見えがちです。実際、大スターや大社長はインタビューしにくいと言われており、インタビューの際にも取り巻きが多く、「妙なことを言ったら許さんぞ」というようなバリアが作られます。
しかし一方で、偉ぶらず、警戒心を与えない有名人もいます。そんな警戒心を与えない有名人の一人が、自称ゲージツ家で、一時期、テレビの露出も多かった、クマさんこと篠原勝之さんです。篠原勝之さんは、過酷な幼少期を過ごしており、生まれてすぐにジフテリアにかかって嗅覚と左耳の聴覚を失い、さらに幼少期には父親に殴る・蹴るといった、虐待に近いほどの体罰を受け続けていました。しかし、そのようなツライ体験を感じさせないような飄々とした雰囲気を持っており、一言しゃべっただけで、十年来の友達と出会ったようなあったかい気持ちが、心の中に広がってくる人物です。例えば、篠原勝之さんとインタビューした方の、篠原勝之への印象をまとめると、次のようになります。
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偉いのに少しも偉ぶらない芸能人や知識人は、たいてい一人でインタビューのスタジオに出向くもので、篠原勝之さんや、一時期メディアに多く登場しており現在は東京理科大学特任副学長もしている数学者の秋山仁さんも、一人でスタジオにやってきていました。そのような方には、たとえ同行者がいたとしても、たまに事務所の人が一人ついてくる程度です。おそらく、教養が邪魔をしてか、取り巻きをチャラチャラ連れ歩くことに抵抗があるのでしょうが、その飾らない様子や自然さが、「どうぞ何でも聞いてください」という雰囲気を漂わせるわけです。そのため、話している方もリラックスできるため、会話の中で、揚げ足取りをしたり、おちょくったものの言い方をしたり、しやすくなるわけです。
相手との垣根を取り払うという意味では、お笑い会の大御所である、ビートたけしさんや、さんまさんも、警戒心を感じさせない面を持っています。ビートたけしさんや、さんまさんの場合は、テクニック的な話術にはなりますが、会話の前に自分を落としてからしゃべり出すことが多く、「いや、オレってバカだからさ」「実はね、オレ、こんなボケやちゃってさ」を枕詞にして、トークを始めることがよくあります。自分を落とすことにより、相手との境界をなくてくれるので、円滑に会話を始めるきっかけを作ってくれます。ビートたけしさんや、さんまさんのこのような話術が、トークでの友達しゃべりのきっかけを作り、現在のタレントの人気になっているのかもしれません。