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あいさつは基本的なことではなく、意味ない?
最近は、あいさつは基本的なことではないと考え、意味ないことだと考える若者が多くなってきています。また、職場ではなぜか不機嫌な人も多く、「おはようございます」や「お先に失礼します」など、以前だったら当たり前にかわされていた定番の挨拶を、手抜きする人が増えました。ウンもスンもなくヌーっと職場に貼ってくるベテラン社員や、すれ違っても知らん顔の若手社員もいます。また、自発的に挨拶しないだけでなく、こちらから挨拶しても、きちんと挨拶を返さない人も、度々見かけます。中には、「おはようございます」と挨拶しても、形式的に返すならまだ良い方で、極端な場合には、全くあいさつを返さない人もいます。あなたの職場に、そのような人たちが多ければ、職場の活気も失われていき、生産性も低下していくハズです。
挨拶は、ただのマナーや社会的な慣習であって、あまり意味がないと思われがちです。しかし、人間の第一印象の大切さは、1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが行った研究により「メラビアンの法則」としてまとめられています。「メラビアンの法則」とは、次のようなものです。
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第一印象が何秒で決まるかは、いろいろな目安がありますが、早くて3~5秒、遅くとも15秒以内に、相手の第一印象が決定します。そして、人は、第一印象の中で、見た目である視覚情報の次に、聴覚情報を重視します。そして、挨拶こそが、出会って数秒で、初対面の人と交わされる聴覚刺激になるわけです。また、挨拶には、視覚・聴覚・言語の情報が全て含まれていますから、挨拶に関連した一連の動作で、第一印象の9割以上が判断されてしまいます。
あなたが、もし初対面の人と会ったら、その人がどのような人か判断する情報は全くないため、白でも黒でもないグレーの存在です。むしろ、普通は初対面の人を警戒するものですから、黒寄りのグレーといったところでしょうか。あなたは、その初対面の人に対してどう接すればよいか目安をつけなければいけませんが、初対面なのに挨拶もしない人物であれば、まず、信用できないでしょう。
さらに、特定の人の好き嫌いの70%は、第一印象により決定されます。そのため、一度、初対面で嫌悪感を抱いた人の70%は、そのまま嫌い続けることになります。実際、あなたの職場内の人への好き嫌いを見渡しても、第一印象で嫌いになった人は、そのまま嫌いで居続ける場合の方が、多いでしょう。
現在は、挨拶の大切さが無視され、おろそかな時代になっています。しかし逆に考えると、ちょっとにこやかに挨拶できるだけで、「あいつは見どころのあるやつ」と思われて、簡単に他の人より得をすることができます。職場内で評価されるためには、仕事で業績を上げるより、きちんと挨拶する方が、よっぽど手軽でカンタンです。そのため、挨拶のテクニックを利用しない手はありません。実際、社内で出世してのし上がっていく人というのは、仕事ができる人というよりはむしろ、人間関係を築くのが上手な人である場合がほとんどです。
「私は仕事をきっちりやっているんだから、挨拶くらい適当でいいじゃないか」という人に限って、社内でも浮いた存在で、人望もなかったりします。そのため、協力者も得られず、大きい仕事を任されることもありません。挨拶は、第一印象でその人の人間性の全てを表すことのできる、総合芸術です。あいさつの総合評価でマイナス点の人間からは、最終的に人が離れていき、挨拶しないことで多くの人に対して与えた不快感の、何倍もの不快感を感じることになってしまいます。
正しい挨拶の仕方と、基本的なこと
挨拶というと、「正しい挨拶の仕方はどうなのか?」と気にする人も多いですが、挨拶は印象をよくしてもらうためのものなので、「正しい挨拶」を意識しすぎる必要はありませんし、「元気な挨拶」をしようと気張る必要もありません。あいさつは、あなたの印象をいかに相手に強く残し、さらに良い印象を持ってもらうか、にかかっています。そのために気をつけたいのは、次の3点です。
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「大きな声でいう」挨拶は、あなたの印象を、聴覚刺激で相手に強く印象づけます。中には、下を向いて口の中でボソボソ挨拶するような人もいますが、そのような人は印象が希薄になり、通り過ぎてから、一体、今のは誰だったんだ、と頭をひねらされたりもします。一方、きちんと大きな声であいさつすれば、相手がすれ違いであなたの方を見ていなくても、メラビアンの法則よろしく、聴覚による刺激で、良い印象を残すことができます。
大きな声で挨拶するコツは、きちんと背筋よく立って挨拶することです。人間が声を出せるように進化したのは、二本足でしっかり立つようになったためです。立って歩き始めたことにより、のどぼとけが首の下の方に移動して声が出るようになり、さらに声が出ることによって言葉が生まれました。そのため、犬や猿のように二本足でしっかり立てない動物は、叫び声しか出すことができず、人間のようによく響く発声はできません。また人間でも、前のめりの悪い姿勢で挨拶すると、しっかり通る声は出ませんから、姿勢をよくして、よく響く声を出すようにしましょう。もちろん、姿勢がいい方が見た目にもきれいなので、良い印象をもたれやすいです。
「立ち止まって、目を見ていう」挨拶は、あなたの印象を、視覚刺激で相手に強く印象づけます。相手はこちらの方をきちんと見ていなくても、動きが止まると視界の端で捉えてしまうものですし、自分の方を見ている視線というのは、気配で察知できるものです。
最近は、取引先の会社の受付でさえも、資料をめくりながら、下を向いて挨拶する女性ばかりです。確かに忙しいのは分かりますが、そのような女性が受付にいると、取引先に行くたびに「また、この人が受付か」と不快な気分になり、その人が支店に異動になると「これで、あの不快な気分から解放される」と安堵させられたりします。逆にいうと、「立ち止まって、目を見ていう」挨拶ができる人は、見渡してみるとほとんどおらず、スーパーやコンビニの店員の「ありがとうございました」という言葉でさえ、常に片手間です。そのため、「立ち止まる」「目を見る」という動作は、ハードルが低いにも関わらず、実践者が少ないため、絶大な効果を発揮します。立ち止まって、目を合わせて挨拶できれば、「おっ、あいつか」と相手に印象づけることができ、「あいつは見どころのあるヤツ」というカテゴリーに、充分、入ることができます。
「二言三言ほめる」というのは、あなたの印象を、会話内容で相手に強く印象づけます。「大きな声」や「立ち止まって、目を見ていう」というレベルまでなら、体育会系の新人社員なら普通にこなす人もいますが、ホメ言葉まで出るようになると、「あいつは会社の将来をしょって立っていくヤツ」にまで評価されます。二言三言ほめるとういのは、例えば、次のようなホメ方などです。
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このようなほんの少しの挨拶で、自分を相手に印象づけます。相手を褒めるためには、次の2つのパターンがあります。
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「相手の個人情報」の場合は、あらかじめ相手の情報を得ておき、その引き出しの中から会話の糸口を探します。個人情報を得るためには、マメでなければならず、相手の趣味や読んでいる本、共通の友人の話題などをこまめに集めておきましょう。また子供がいれば、子供の学校の情報などももっていれば、「おはようございます。そういえば、上のお子さん、そろそろ中学校じゃないですか?」と会話の糸口が生まれ、相手からも「そうなんですが、なかなか勉強に身が入らなくて」と会話が続きやすく、人間関係の距離もぐっと縮まります。子供のことを話題にするの場合は、直接相手をホメているわけではありませんが、子供のことまで気にかけてもらえていたら、悪い気のする人もいないでしょう。
「相手のいつもと違うところを発見する」場合は、会った瞬間に、相手の顔色や服装などをチェックして、いつもと違うところを発見してホメます。なお、悪いところは指摘してはいけませんので、決して「顔色がよくないですね。どこか具合が悪いんじゃないですか」と言ってはいけません。パッと相手をみて、ほめるところを探したら、今度は、口に出してすぐに言います。
「相手のいつもと違うところを発見する」場合は、特に、瞬発力が大事なので、日頃からの訓練が必要です。プロ野球やサッカー、ボクシングなど、スポーツ中継のアナウンサーは、素早いプレーの中でたやすく中継しているように見えますが、動きに合わせて口を動かせるよう、毎日ものすごい練習を重ねています。また、中継の合間合間に選手の情報を挟めるよう、中継前に、選手の背番号や経歴などを、全てチェックして頭に入れています。そして本番では、頭の中でゲームの流れをある程度組み立てながら、目に映る状況を次々に実況していきます。スポーツの中継で、その域に達するためには、日々の訓練と事前準備を積み重ねるしかありません。同じように、相手のいつもと違うところを発見して褒める場合も、瞬発力が必要になってきますから、意識して実践していかなければ、技術を身につけることはできません。ただし、挨拶のときに褒める域にまで達している人はほとんどいませんから、技術を身につける価値は十分にありますし、上手にほめられるようなれば、営業成績もアップし、出世にも大きく影響してきます。
目指すは「挨拶ひとつで愛される」ようなあいさつです。日常の挨拶は、一つの大きなチャンスですし、「おはよう」とか「こんにちは」という、ごく普通の挨拶がきちんとできるようになれば、人心掌握の第一歩を達成したと言えるでしょう。日頃、何気なくかわしている挨拶にも、これだけのチャンスが隠されているため、あだやおろそかにはできません。