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話題が思いつかないときの探し方
仕事で、お客さんや取引先の人と2人でいるとき、ふと、沈黙して、困ることがあります。ざわついている中で会話が途切れ、一瞬沈黙することを、俗に「天使が通った」ということもありますが、この一瞬の沈黙のとき、話題が思いつかないときの探し方で、苦労した方も多いかもしれません。
話題の思いつかないときの探し方が上手なのは、やはり営業職の経験のある方でしょう。話が上手かどうかは別にして、おしゃべりの達者な中年の男性に「お仕事は?」と尋ねると、十中八九、営業の方だったりします。ベテランの営業職の方は、初対面の人ばかりでなく、女性のいるお店にいっても、延々とホステスさんとの話が途切れることもなく、さらに、日本人のホステスさんだけでなく、日本語の苦手な中国人のホステスさんとも延々と話し続けることができていたりします。
一方、普段、事務職の仕事の多いホワイトカラーの方は、ランダムトークやフリートークに慣れていないため、なかなか、営業職の人のように闊達に会話できにくいです。しかし、昔から日本で言われている、話題がないときの話題の探し方のコツを使えば、簡単に会話力を高めることができます。その話題探しのコツとは、次の言葉に秘められています。
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「木戸に立ちかけせし衣食住」とは、初めての人と合うときの会話の話題探しのセオリーで、話題の頭文字をとったものです。
「き」は、気候です。気候は天気のことですが、季節に関連した、桜や海開きなどの話題も含みます。「最近、暑くなってきましたね」「今年は、暖冬だそうですね」といった気候の話題は、当たり障りのない会話として使われるだけでなく、手紙の中でも時候の挨拶で、まず始めに書かれる話題です。
「ど」は、道楽です。要は、趣味のことですが、趣味と堅苦しく考えることはなく、最近凝っていることや、最近ハマっていること、気になっていることなどの話題も含みます。また、最近みたテレビや映画、アニメなども、気になっていることに含めることができます。「最近、ウォーキングはじめたんですけどね」「最近、紅茶にハマっていましてね」といった、軽い内容で話題を振るだけでも十分です。
「に」は、ニュースです。ニュースといっても社会的な時事関連のネタだけでなく、身近な事件やトピックの話題も含みます。「この前、近所の犬が子供を産みましてね」「駅から会社までの間に、新しいコンビニができましてね」など、ご近所ネタなら、テレビを見ていなくても誰でも探すことができますので、改めて考え直してみると、いろいろ話題は転がっているものです。
「た」は、旅です。旅行での話題や、ちょっとしたお出かけの話題も含みます。「この前、コストコに初めて行ったんですけどね」「仕事の帰りに、少しパルコに寄ったんですけどね」といった、軽い買い物やウィンドーショッピング、寄り道などの話題でも、話のネタになります。
「ち」は、知人です。共通の知人だけでなく、あなたの上司や部下も、面識はなくともあなたとの関係を想像できる範囲なので、知人ネタになります。また、有名な芸能人などは、共通で知っている人になるので、知人ネタになります。2人が同じ出身校であれば、出身校の校長先生や保健の先生なども、共通の知人となりえます。また、2人が同郷なら、同郷の有名人も共通の知人でしょう。さらに、例えば2人ともアニメ好きなら、共通で知っている声優さんやアニメ監督さんも知人ネタになるため、「声優の戸松さん、結婚したらしいですね」などといった話題でも、話の盛り上がりがないときに、盛り上がるテーマとなります。
「か」は、家族です。両親や配偶者、子供だけでなく、あなたの飼っているペットも家族に含まれます。さらに親族の幅を広げていけば、誰かしらが入学したり、入社したり、結婚したり、出産していることも多いはずです。また、家族だけでなく、家庭の話題と考えることもできるため、「最近、嫁さんが禁煙しろとうるさくてですね」「昨日、家に虫が出て、家族中がパニックになりましてね」といった話題でも大丈夫です。
「け」は、健康です。特に中年以上の方は、健康に気をつけるようになっていることが多いので、健康ネタは鉄板です。具体的な健康ネタが思いつかなければ、会社で受けている健康診断のときの話題などでも構いません。また、若い方の場合は逆に、健康を無視した武勇伝もネタにすることができるので、「この前、仕事が終わってからクラブ行って、完徹で、一睡もせずに次の日も仕事しましてね」といった健康上の無茶も、話題になります。
「せ」は、性です。ディープな話でなくとも、気になっている女性や男性の話でも大丈夫です。「この前、入ってきた新人と風呂行ったら、すごい筋肉でしてね」といった男性のセクシーさや女性の魅力も、話のテーマになります。
「し」は、仕事です。仕事の場合は、「深い入りしない程度の仕事」という条件が付くため、間違っても、深入りしたような「おたくの会社、やばいらしいってウワサになってますね」といった話題は禁物です。相手が主婦の場合は、家事も仕事のうちなので、「最近、梅雨で洗濯物の生乾きがひどくてですね」といったテーマでも、話は盛り上がります。
「衣食住」は、そのまま、衣食住です。「衣」は、着るものだけでなく、アクセサリーや靴など、身につけるもの全般に当てはまります。「食」は、食べ物なので、外食などのグルメレポートや、もらったお土産物のお菓子も話題になります。「住」は、賃貸なら家賃の話も使えますし、一軒家なら草抜きなども話題になるでしょう。
なお、「木戸に立ちかけせし衣食住(きどにたちかけせしいしょくじゅう)」ではなく、「木戸に立ちかけし衣食住(きどにたちかけしいしょくじゅう)」という間違った語呂が一般的になりつつあります。しかし、本来は、性の話題である「せ」が含まれているため、注意しましょう。
以上の頭文字を頭に思い浮かべつつ、話題を見つけながら、なんとか会話を成立させます。しかし、とっさに会話の話題が思いつくのに慣れていない方は、お笑いの芸人さんのように、普段からネタ帳をつけるようにしてみたり、1日3個通勤中に話題を考えておく習慣をつけたりしてみましょう。営業職の人のトーク力は、結局は生来のものではなく努力で後天的に作られたものなので、あなたも普段から鍛えておけば、話題をとっさに思い浮かべるトレーニングにもなりますし、自然と、会話のテーマも溜まっていきます。
話の話題がないとき・思いつかないとき用の練習
話の話題がないときや、思いつかないとき用の話題は、「木戸に立ちかけせし衣食住」を元にしてテーマを探しますが、会話で実際に使うときは、さらに次の点に気をつけると、話が弾みやすくなります。
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「自分のことを話す」というのは、初対面の場合は、まずは自分のことを話した方がいいということです。普通、初対面の人の場合、相手があなたのことを警戒していて、信用できないと感じています。そのため、あなたが質問しても、一言、二言の返事で終わってしまいます。そのため、まずは自己開示して、あなたのことを話して知ってもらい、相手に信用してもらうようにします。例えば、「最近、うちの嫁さんがダイエットを始めましてね」など、自分の話題から、まずは始めます。よく「会話上手は聞き上手」と言われていますが、それは、相手の警戒心が薄れてきてからの話しです。初対面で、いろいろ質問されると、相手は、詰問されているような気分や、または取り調べで事情聴取されているような感覚に陥ってしまいます。そのため、相手に信用されるまでは、なるべくあなたが話し続け、あなた自身の話題を話すようにしましょう。そのような会話は、相手にとっては侵襲性の少ない話題ですし、ただ聞いているだけなので、気楽です。そして、ある程度、あなたが自分のことを自己開示した後に、「ところで、ダイエットとかって、おすすめの方法ありますかね?」と、相手への質問へと流していった方が、相手にとっても、自分の話を自然に話しやすくなります。「相手が自然に話しやすい雰囲気」を作れるようになることができれば、あなたのトーク力は一流です。
「身近な話題をふる」というのは、絶版となった電子図書にも書かれていたキャバ嬢の会話のテクニックですが、日常でもよく使えるテクニックです。会話の話題を選ぶときは、なるべく大衆ウケするようなネタを選ぶようにします。例えば、グルメの話題であれば、1食1万円の都市部のフレンチの話よりも、1食650円の近所のラーメンの話の方が盛り上がります。また、最近ハマっていることの話題であれば、ゴルフやスノーボードの話よりも、食べ歩きの方が、盛り上がります。広く大衆受けする内容の方が、「え、どこのラーメン屋ですか?」と、相手も興味を惹かれます。狭くディープな世界であればあるほど、ハマれば盛り上がりますが、相手が興味がなくスベってしまう可能性も高くなります。また、共通のディープな趣味の話題ほど、相手の方が詳しために釈迦に説法な会話になってしまいます。ディープな趣味の話題だと、知識量の優劣や、趣味への細かいこだわりで、2人の意見が対立しやすかったりするため、難しい面のあります。基本的に、趣味は、町から離れた趣味であるほど、競技人口も少なく、理解する人も減ります。例えば、水に関する趣味であれば「プール > 海水浴 >シュノーケリング > スキューバダイビング」というように、海や山に行くほど、プレイヤーも少なくなるため、話題を選ぶときの目安としてみましょう。
「くだらない会話でいい」というのは、おもしろい会話でなくてもいいということです。話の途切れない人の話を聞いていると、案外、大して身にならない話や、何も得られない話をしているものです。営業職のベテランは、確かに話し続けらていますが、おもしろい会話ではないため、お笑い芸人の明石家さんまさんや、ダウンタウンの松本人志さんとは、比べようもないほどつまらないです。しかし、プロでもない一般人である私達が、おもしろい会話をしようと思うと、逆に、頭で考えすぎて話が止まりがちになってしまうため、会話がぎこちなくなります。芸能人の中でトーク上手な人としては、楽屋でも話題が途切れず場持ちがいいと言われる、島田紳助さんや武田鉄矢さんが有名ですが、島田紳助さんは、トークの秘訣を「頭ではなくて、心で話す、感情で話す」と語っていました。実際、島田紳助さんの言うように、頭で考えるのではなく、感情のままに、心に浮かぶことを掬って話すように心がけるだけでも、話題が思いつかないときは減ります。
「同じネタを、いろいろな場所で、いろいろな人に話す」というのは、全く同じ会話をいろいろな人にするということです。例えば、「最近、車のエアコンが壊れましてね」といった話題を、知り合いのAさんとの会話、職場でのBさんの会話、職場でのCさんとの会話、町内会でのDさんとEさんの3人での会話、といった具合に、いろんな場所で、いろんな人にします。実際、芸人さんを見ても、案外、別のテレビ番組で同じ話をしていたり、ラジオで同じ話をしていたりするものです。同じ話を繰り返している効果としては、同じ話をし続けていると、妙にウケるときと、ウケないときがあることに気づくようになります。そして、ウケるときの会話を調べることで、話の順序や、会話の抑揚、身振り・手振りなどのアクション、間のとり方や溜め方を、上手にコントロールできるようになり、会話力が向上します。
「とにかく、いろいろなネタを話してみる」というのは、初対面の人でなくとも、親しい人でよいので、いろいろなネタを話しまくってみることです。数撃ちゃ当たる、的な根性論ではないですが、いろいろなネタを話していると、少しずつですが、10人中10人にウケる鉄板ネタが、ストックされるようになってきます。お笑い芸人も、お笑いコンテストであるR1グランプリやキングオブコントで出すネタは、日頃、ライブ会場で使うネタの中でも、特に出来のよい、ウケるネタを選んでいます。また、「松本人志のすべらない話」で芸人さんが話すネタも、日頃の雑談やラジオで話している話題の中で、特にウケるネタを選んでいます。そのため、あなたも同じように、日頃からいろいろなネタを話し続けていれば、確実に盛り上がるネタを、取捨選択できるようになるわけです。
お笑い芸人のように咄嗟に話題を考えるコツは、「最近・・・」と言葉に出しながら、その間に頭をフル回転させて話題を探すことなので、枕詞に「最近は・・・」「最近ですね・・・」と入れるようにしてみましょう。なお、話の話題がなかなか思い浮かばない方というのは、心のブレーキをいくつも持っている場合が多いものです。そのため、自分の心のブレーキを思い返しながら、一つずつ外していって親しい人との日常会話で試すようにしていけば、ギアチャンジするように段階的に、雑談力は上がっていきます。もし、ブレーキが12個思いついたら、12個のブレーキを1個ずつ外せば、12段階のギアでレベルアップでいきます。トーク力の上達は、まずは、話をしてみることが大事なので、「この話、この人にしたっけ?」と迷ったりせず、同じ人に同じ話をしても気にしないようにしましょう。もし、その人にすでに1回話したことのある話題だったら、「ですよねー、話そうとしてたの、別の話題でしてね」と、適当にかわせる技術も、一緒に身に着けてしまいましょう。