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メール処理の効率化
仕事をしていると、絶え間なくメールがやってくるため、メール処理の効率化を図らないと、どれだけ時間があっても足りません。例えば、2018年の調査では、ビジネスマンの仕事で使うコミュニケーション手段の上位3つは、次のようになっています。
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また、2018年のビジネスメールの1日の平均は、受信が約34通、送信が約12通であり、個人的なメールも含めると、その倍以上のメールを1日にやり取りしていると考えられます。もちろん、立場が上になればなるほど、さらに成功すれば成功するほどメールは増えるものなので、例えば、AppleのCEOであるティム・クックが1日に処理しているメールは、700件以上です。
そのため、メール処理のテクニックは、現代ビジネスマンにとっては、必須のスキルとなってきました。一方で、メール処理は最近登場した新しいスキルなので、効率化できているビジネスマンは、驚くほど少ないのが現状です。ビジネスマンが心がける必要のあるメール処理の効率化には、次のポイントがあります。
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それぞれについて、見ていきます。
メール処理の効率化:1.その場で返信する
「1.その場で返信する」というのが、メール処理の効率化の1つめのポイントです。メールを見たら、必ずその場で返信するようにします。その場で返信すれば、メールは1回しか見る必要がありません。しかし、後で返信しようとすろと、後で、またメールを1回読んで内容を把握する必要があります。
当然、2回読むより、1回読む方が、時間は短くて済みます。確かに、異性とのメールやLINEなら、じらしたりなどの駆け引きも必要かもしれません。しかし、ビジネスのメールに駆け引きは必要はないので、なるべく、その場で返信するようにしましょう。
メールを早く返信するコツは、メールに優先順位をつけないことです。優先順位をつけていると、重要な返信ばかりしているうちに、返信できないメールが溜まってしまい、処理できなくなってしまうからです。そのため基本的には、「すぐに返信する」、そして「すぐに削除する(または、すぐにアーカイブにする)」というのが鉄則です。
ただし、他のスケジュールとの兼ね合いが必要だったりして、どうしてもすぐに返事できない場合も、確かにあります。そういう場合は、マーキングしておき、後で、まとめてマーキングしたメールを返すようにします。
中には、丁寧な文章を書こうと思って、時間がかかってしまう人もいます。しかし、メールに手紙のような堅苦しい時候の挨拶は不要ですし、どうしても丁寧に返事をしたいなら、ネットで検索した挨拶を、そのまま借用してしまいましょう。また、社内メールであれば、すぐに返しやすいよう、「結論を書くだけでOK」というルールを作ってしまう方法もあります。
メールの返事をすぐに書かずに置いておくと、つねにメールの返信のことが頭の片隅に残ってしまいます。達成できなかったり、中断したりしていることは記憶に残りやすいもので、このことを「ツァイガルニク効果」と言いますが、メールやLINEの返事を置いておくと、ツァイガルニク効果により、常に気持ち的に忙しなくなり、ストレスになってしまいます。
現代社会では、メールの返信の速さというのは、そのまま、ビジネスマンとしての能力を表すようになってきています。例えば、Googleの元CEOであるエリック・シュミットは、「とびきり優秀で、とびきり忙しい人は、たいていメールの返信が速い」と語っています。また、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんは、Yahooの社長に井上雅博さんを選んだとき、その理由について「一番メールの返事が速いから」と述べています。
ショッピングモールのAmazonでも、Amazonに出品している人は、お客様からのメールに24時間以内に返信しなければいけないというルールが、以前ありました。最近のグローバルスタンダードでは、どんなメールでも24時間以内に返すというのが、一般的となりつつあるのかもしれません。なお、「内容によっては、24時間以内に返信できないのでは?」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、すぐに答えられない内容でも「後で調べてご連絡いたします」と、一言返信することはできます。そのため、どんな場合でも、24時間以内にメールを返信することは可能です。
メール処理の効率化:2.判断は5秒でする
「2.判断は5秒でする」というのが、メール処理の効率化の2つめのポイントです。メールを見たら、返信内容を5秒で決めるようにします。ほとんどの場合は、それほど熟考する必要のない返事である場合がほとんどですから、5秒もあれば充分です。
未完了のまま、何日もメールを放置しておくのは厳禁です。判断材料が足りなくて、どうしてもすぐに判断できない場合のみ、相手にすぐ判断できないことを伝えて、一旦、保留にしておきましょう。
メール処理の効率化:3.文章は20行以内で、簡潔にする
「3.文章は20行以内で、簡潔にする」というのが、メール処理の効率化の3つめのポイントです。なぜ20行なのかというと、メールをパソコンでスクロールせずに見れるのが、だいたい、20~30行程度だからです。メールの行数が少なければ、相手にとっても読み漏れや読み間違いも少なくなり、読みやすいメールになります。
またこちらにとっても、短い行数の方が書きやすいです。20行以内で簡潔に書かれてあれば、メールの内容を理解するのにも10秒かかりません。ソフトバンクグループの孫正義さんも、メールが短いことで有名で、指示だけを出し、理由などはメールで説明しないため、ほとんどのメールが3行以内だといいます。普通のビジネスマンが孫正義さんのように端的なメールをすると、さすがに失礼になってしまいますが、成功している経営者は、メールの文章でさえも効率化を図っていることが分かります。
文章を簡潔にするためには、箇条書きを使うようにしましょう。例えば、次のように書いたりします。
この企画のポイントは、3つです。 ・新規顧客獲得のため ・○○のブランディング ・○○層のマーケティング この企画にかかる収入予測 当社で行うこと |
箇条書きであれば、こちらの書く時間・相手の読む時間・相手の判断する時間も節約でき、相手からの返信もシンプルとなるため、いいことづくめです。
メール処理の効率化:4.選択肢を2つ以上用意する
「4.選択肢を2つ以上用意する」というのが、メール処理の効率化の4つめのポイントです。例えば、日程を調整するときは、次のように、いくつかの候補を提示しておきます。
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日時の約束だけでなく、飲食店を決めるときなども、可能であれば、こちらから希望の店をいくつか先に提示してしまいましょう。そうすれば、「何日にする?」「何時がいい?」「どこにする?」といった、無断なメールが繰り返されることもなくなります。
世の中には、優柔不断で時間ドロボウのような人も多くいますが、そんな人とのやり取りに時間を浪費させられては、いくら時間があっても足りません。メールで約束をするときは、こちらがイニシアティブを取って、さっさと決定事項を済ませてしまいましょう。
メール処理の効率化:5.24時間ルールを設ける
「5.24時間ルールを設ける」というのが、メール処理の効率化の5つめのポイントです。24時間ルールは、仕事の仕組み化の第一人者である泉正人さんの会社でも取り入れているルールで、次のようなルールです。
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24時間ルールを作ることにより、次のようなメリットがあります。
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「1.皆の時間の節約」というのは、稟議書を提出したり、上司のハンコを待ったりする時間を無くすことができます。皆にメールするだけで提案や採決ができるので、皆の使用する時間も、最小限に抑えられます。
「2.良い企画はスムーズに通る」とは、良い企画であれば、自然に24時間で承認されて、どんどん企画を進行できます。普通に企画書を通そうと思えば、例え良い案件であったとしても、上司や経営者など複数の承認を得なければいけないため、なかなか提案が通りません。しかし、24時間ルールなら、良い提案が途中で滞ったり、停止することはありません。
「3.悪い企画は素早くブラッシュアップされる」とは、全スタッフにメールするので、何かまずいことがあれば、必ず、誰かしらのチェックが入り、ストップがかかり、改善されるためです。人は、自分のアイデアを改善するのは苦手な一方、他人のアイデアや企画を批判したり、難クセをつけたりするのには、意外に得意で、あまり頭も使いません。そのため、全員にメールをすると、改善案があれば、サクサク出てきます。そのため、企画案は素早くブラッシュアップされ、すぐに良い企画書へと生まれ変われるという一面もあります。
実際、24時間ルールを設けることで、泉正人さんの会社は、スタッフから提案されたアイデアがいくつも実行されるようになり、提案への議論も活性化し、会社全体の進化のスピードが一気に向上しました。
24時間ルールは、経営者や管理職でなければ取り入れられないと考えられがちですが、個人のメールでも応用することができます。メールの末尾に、「問題があれば24時間以内に返信お願いします。問題なければ、進行します」と付け加えればいいだけです。アメリカの通販会社バーチボックスのCEOであるケイティア・ビューチャンプも、返事が必要なメールには、必ず期限を明記するよう社員に徹底させています。メールというと、ついつい「いつ返事をしてもいい」と思ってしまいがちですが、優秀やビジネスマンは、返信待ちの時間も、きちんとコントロールしているわけです。
24時間ルールは、社内の同職種の人だけで設けたり、仲間内だけで設けても、円滑に物事が進展しやすくなります。24時間ルールを活用するためには、皆の意見のやり取りを視覚化できやすいよう、サイボウズ Officeなどのグループウェアを用いるのもおすすめです。
メール処理の効率化:まとめ
以上のような、メール処理の効率化のメールテクニックは、慣れないうちはなかなかスムーズに行えないかもしれませんが、常に意識しておけば、自然にこなせるようになります。日常生活のLINEでも、練習することが可能なので、常々、効率化を意識しながらコミュニケーションツールを使うようにしましょう。
なお、仕事ができる人ほど、メールチェックの時間や回数も決めており、例えば、前述の泉正人さんは、効率的にメールを返信するため、早朝の誰にも邪魔されない時間に、一気にメールチェックをして、メール処理しています。一般的には、優秀なビジネスマンの場合、メールチェックは1日2回~3回です。
基本的には、「メールで知らせてくる内容というのは、それほど緊急性がない」という場合がほとんどなです。一方、本当に大切な案件というのは、直接呼び出されて口頭で伝えられたり、内線や外線がかかって伝えられます。そのため、あまりメール処理に神経質にならず、適当にこなしていくというのも、メール処理の効率化の秘訣と言えるかもしれません。